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あこがれのHKのレビュー・感想・評価

あこがれ(1966年製作の映画)
3.5
山田太一氏の訃報を聞き、追悼作品としてセレクト。
でも本当は山田太一脚本と言えばやはり映画よりTV、それも連続ドラマ。
『ふぞろいの林檎たち』『想い出づくり』『男たちの旅路』『早春スケッチブック』『岸辺のアルバム』『シャツの店』などの名作が次々に頭に浮かびます。

ですから山田太一脚本の映画はと言うと、実はほとんど知りません。
本作はTVの木下恵介劇場の『記念樹』というドラマの映画化で、監督は恩智日出夫、脚本は山田太一(当時43歳)。原作は木下恵介なので山田太一は正確には脚色ですね。
山田は松竹に助監督として入社し木下恵介に師事、口実筆記なんかもよくやったとか。
その後フリーの脚本家となり、本作は木下プロのTVドラマを担当し始めた頃の作品。

物語は孤児院で育ち他所に養子となった青年と、同じ孤児院育ちでろくでもない父親に振り回される少女との純愛モノ。
時代も時代ですし、純愛ですからからキスシーンすらないのが逆に新鮮。

主人公はデビューし立てで初々しくも初主演の田村亮(高廣、正和の弟:当時20歳)と内藤洋子(当時16歳:ジャケ写のアップ)の二人ですが、この二人を支えるのが新珠三千代、加東大介、音羽信子、小沢昭一、沢村貞子など芸達者な名優ぞろい。
内藤洋子の幼少期は林寛子(当時7歳)。
『ウルトラQ』の一平こと西条康彦と『ウルトラセブン』のアンヌ隊員ことひし美ゆり子(当時のクレジットは菱見地谷子)も発見。

この頃はまだ後の山田太一節は感じられませんが、セリフにかすかな片鱗はあるような。
音楽の武満徹も本作では前衛風ではなくメロディアスな楽曲をつけており、昭和60年代の良くも悪くも懐かしい雰囲気を堪能できました。
しかし時代が変わってしまい今の若い人には理解できない人間関係なんかも多そうですね。
そう思うことがまた自分が老けた証拠でもありますが。
主人公の部屋いっぱいに飛行機の模型が吊るしてあったけど、そういう友達いたなあ。

U-NEXTに山田太一オリジナル脚本のTV単発ドラマの観てないヤツも何本かあったので観てみようと思います。
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