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007/リビング・デイライツのtjZeroのレビュー・感想・評価

007/リビング・デイライツ(1987年製作の映画)
4.3
シリーズ第15作、4代目ボンドとして初登場したティモシー・ダルトンの印象は”マジメ”。どんな所が、というと…
①演技がマジメ…元々舞台経験の豊富な演技派の役者なので、セリフ回しは流暢だし、所作はさりげなくも適確です。特に、銃の扱い方がリアル。弾の装填、構え方、撃った後のリアクション、などなど真実味がこもっていて有能な諜報員を体現しています。故・ダイアナ妃が「もっとも原作に近い007」と評したのも頷けます。
②女性にマジメ…肉食男子の代名詞のような役なので、任務の為とはいえ、女性をとっかえひっかえするのがいつものジェームズ・ボンドなのです。ところが本作のダルトンは、”たった”ふたりの女性としかベッドを共にしません。これはシリーズ最少でしょう(笑)。製作当時にAIDSが流行したという世相もありますが、やはりダルトンのストイックなパーソナリティに合わせた設定という要素が大きいと思います。

こうしたマジメで地味めな新ボンドなのですが、それとは対照的にロケーションはアルプスの雪山→芸術の都ウィーン→エキゾチックなアフリカの玄関口モロッコ→アジアの火薬庫アフガニスタン、と大いに派手でうまくバランスがとれています。
ストーリーの方も、本当の味方、とりあえずの味方、とりあえずの敵、本当の敵…というように各陣営のパワーバランスがそれぞれの目的や立場によってめまぐるしく展開する、よく練られた構成になっています。

マジメで正統派の主人公、風光明媚なロケーション、波乱万丈の物語…という3本の矢がきっちりと合わさった骨太の娯楽作。シリーズの教科書と言ってもいい位のすぐれた一作になっています。
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