新潟の映画野郎らりほう

遊星からの物体Xの新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
4.5
【パラダイムシフト】


序盤に コンピューターゲームに興じていたマクレディ(ラッセル)は、自身の敗北を認めずに 破壊行為に及ぶ ~ 自分の考え/世界こそが唯一絶対であり 自分以外の世界/考えを認めようとしない ― 自身の狭量で御粗末なアイデンティティー保身の為の稚拙な癇癪〈キレる〉だ。



例えば「あなた」が、神戸市東須磨小に於ける教職員激辛カレー虐遇行為の場に 突如現れ、彼等に社会倫理(所謂常識だ)を説き 一連の行為を糾弾したとしよう。

然し…。

“校内”とゆう 外部と隔絶した世界を生きる彼等にとっては、あなたが言う倫理/常識こそ“非常識”なのであり、依って あなたの姿は彼等の目にこう映るだろう ―理解不能な宇宙人と―。

これ迄彼等がずっと続けてきた安定で安心な生活上の慣例/定石/準則。その全てが脅かされ 打ち破られようとしている ―「あなた」に依って―。
自己を全否定される脅威に曝された彼等の鬼胎は如何許りか。

更に今後「あなた」に共感/同調する者が増加/増殖すれば、益々以て彼等は追い詰められる事になるだろう。
追い詰められた彼等はどうするか。その時彼等は、暴力性をより露に 徹底排除/殲滅しようとするだろう ―「あなた」を―。


これ迄の認識の180°転換〈パラダイムシフト〉を迫られて尚 融通訊かぬ狭量な固定観念者は、旧来のアイデンティティーこそが最重要であり〈空虚な現状維持〉に躍起になる。
裸の王様が 今更服を着る事出来ぬ様に、認識転換を拒否し〈居直る〉か〈キレる〉しか選択肢を持たなくなる ― 駄々っ子だ。


常識を疑え。自分自身を疑え。新たな考えをその身に宿せ。この世界が、生活が、明日も同様に訪れると思うな。我々の常識や安寧なぞ「薄氷上のもの」に過ぎず、簡単に崩壊するのだから。

宇宙より来訪せし変革者と、考えを改めず 現状維持に躍起になる駄々っ子達 ― 組織を、社会を、そして世界を破滅させる 本当に恐ろしきは 果たしてどちらなのか、今 追考するべきだろう。




《DVD観賞》