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さくらももこワールド ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌の和のレビュー・感想・評価

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確か3,4年前程に&premiumの映画特集で誰かが取り上げているのを見てから、ずっと観たいと思っていた作品。
去年末に神保町シアターで再上映されているのは知っていましたが、まさかBlu-rayまで販売されているとは知りませんでした。一足遅くネトフリにて視聴しました。

自分は幼い頃にアニマックスで過去のちびまる子ちゃんを観ていた世代ですが、その時観たものとは明らかに毛色が違う部分が存在するのが本作。
何が素晴らしいかとザッとまとめるならば、さくらももこ先生のサイケでファンタジーな画がアニメーションとして動き出す所に尽きると思います。

勝手にちびまる子ちゃんといえばヒデキをはじめとする歌謡曲というイメージがありましたが、本作はそんな歌謡曲のギラギラとした雰囲気ではなく温かい陽の光に溶ろけるようなAOR(シティポップ)の色が濃い。

音楽パートに関しては、ちびまる子ちゃん的な感じではなくて個人的にはクレヨンしんちゃん的なコミカルでぶっ飛んだ感じに仕上がっている。というのも庶民的なものを描き、本人が作中にも登場する先生自身がファンタジーとして生み出したものが動き出す為。
 
この湯浅監督を始めとするアニメーターがさくらももこ先生の画を動かし、それを名曲が彩るという三位一体を観るというだけでも本作は十二分に見る価値があると言えます。

個人的には一応ある物語というよりも、名曲を伝って自分の中にある思い出が蘇るという部分にグッとくるものを感じました。
それはわたしの好きな'歌'に限定されるものではなく、映画であり絵画、本でもあります。作品というものは、その出来栄えというのみでなく付随した体験すべてが価値となるものなのだということ。
それを家族を描くちびまる子ちゃんという媒体でやることに意味があるのだと感じました。我々愛好家にも少なからず家族で共に何かを観たり聴いたりした思い出が残っているものだと思います。
本作はそんな記憶の断片を呼び覚ましてくれます。実は作品自体がノスタルジーなのではなく自身の呼び覚まされた記憶こそがノスタルジーだからこそ、当時を経験しない自分みたいな世代にも同じくノスタルジーを感じることができるではないでしょうか。
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