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ヤクザと家族 The Familyの和のレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
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少し前の話にはなりますが、映画秘宝が炎上した頃でしょうか…仲の良い先輩と世の中は排除しかしないという話題で盛り上がりました。その時に薦められたのが西川監督の"すばらしき世界"でした。その時の流れを考えると本作も正にそれを描く作品であると感じました。

本作が一風変わったヤクザ映画であるということは他のレビュアーの方々が仰っている通りで、本作は昔気質なヤクザのイメージでもある義理と人情をヤクザという枠組みをはみ出して普遍的に描く作品であると思いました。

ヤクザとヤクザの喧嘩によって罪を背負うことになった主人公が、刑務所で罪を償ったにも関わらず大衆によって再び裁かれる。果たして、その大衆に義理や人情はあるのかというのが本作が鳴らす警鐘なのではないでしょうか。
SNSやネットニュースなんかの普及によって、誰もが手軽に情報を手に入れることができる且つ発信することができてしまう今…誰かが何かをやったという一面的な部分を批判し、それが転がりに転がって膨らんでしまう。その現代ではよくある光景が正しさということを盾に大勢が暴力を振るっているようにも見えるわけなんです。

確かに罪を犯すことは悪い。しかし、償った上でやり直すことはできないものなのでしょうか。義理のない正しさの前では「普段の行いが悪い」とか「信頼を取り戻すのは難しい」とかと永遠に言われ続けるだけ。この世界に今、義理と人情は存在するのか…。

この映画を経て、"すばらしき世界"のタイトルが示すものを体感したいと思います。
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