わさび

その土曜日、7時58分のわさびのレビュー・感想・評価

その土曜日、7時58分(2007年製作の映画)
4.2
金に困った兄弟が、宝石店強盗を計画し、実行する。ちょっと店主を脅して適当にかっぱらって闇で売り捌くだけの、単純な強盗の筈だった。が、想定外の出来事が起き、しくじる。それも、家族を巻き込んでの大惨事となる。Then things get really messed up。事態はどんどん悪い方へと転がり、にっちもさっちもいかなくなる兄弟。此処で思い起こされるは『ファーゴ』。果たして兄弟の、彼らの家族の命運や如何に。

良作でした。
救いが無くて暗い内容だけれども、泥沼感をじっくりと堪能出来る、良く出来たサスペンス。
まず冒頭で強盗事件を描き、それから様々な登場人物の視点で、その強盗前後の数日間を追って行くという展開なのですが、この作りも非常に面白かった。
役者も良いです。フィリップ・シーモア・ホフマンとイーサン・ホークが兄弟役っていうのが、第一に美味しいですよね。一見勝ち組に見えるものの、実際には育った家庭環境に不満を抱き、弟にも劣等感を感じて燻っている兄シーモア。対するは、臆病でそこそこのろくでなしだけど、愛嬌があって何処か憎めない弟イーサン。この兄弟の、仲が良いような悪いような、愛情があるような無いような、微妙な距離感の描き方が上手いと思いました。実際きょうだいって、超仲良しな人や超憎しみ合っている人は一握りで、こういう微妙な関係にある人が殆どだと思うから。
アンディが静かに部屋を荒らしていくシーン、あれには感心しきりでした。

取り分け印象に残っているのは、音楽。サスペンスフルで、ちょっと不気味で、そしてちょっと物悲しいその旋律が、本作によく似合い、またこの映画の魅力を大いに引き出していたと感じます。
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