わさび

ガタカのわさびのレビュー・感想・評価

ガタカ(1997年製作の映画)
4.4
粗筋に宇宙云々と書いてあったので、てっきりSFなのかと思っていたら(実際SF要素も多いのだが)、寧ろサスペンスに近かった。

遺伝子操作が進んだ近未来で、完璧な遺伝子操作によって人為的に生まれた子供が「適正者」と呼ばれ、そうでない従来の自然妊娠によって生まれた子供が「不適正者」と呼ばれる世界。前者は知力体力等に恵まれ、社会的に優位に立てる。然し後者は、様々なハンデを抱え、差別されて生きねばならない。
そんな中、不適正者として生まれた主人公・ヴィンセントは、策を弄して適正者に成り済まし、叶わぬ夢を叶えようとするが……というストーリー。

魅力的な物語だった。美しく、儚く、煌いていて、切ない。まるで独りぼっちで眺める満天の星空のような映画だ。
サスペンスやSFというジャンルで味付けしてはあるけれど、結局のところ、アイデンティティを巡るお話なのだと思う。
全体的には親切で見やすい作品なのに、決してイージーな内容ではない。役者も良いし(イーサン・ホークとジュード・ロウの並びは観ていて非常にしっくりくる)、音楽も良い。本作が評価される理由が能く解った。
主要キャスト3人の、いつも何かに恋い焦がれているような表情が印象的だった。それは他人になのか、自分になのか、世界になのか、はたまた別の何かになのかは、わからないけれども。
わさび

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