潮騒ちゃん

リード・マイ・リップスの潮騒ちゃんのレビュー・感想・評価

リード・マイ・リップス(2001年製作の映画)
4.6
初見でヴァンサン・カッセルの虜になりDVD購入。そのまま10年以上棚に寝かせていた。なんて勿体ない…。粗野な男にウットリしたくて久しぶりに鑑賞。今、わたしの目は間違いなくハート型になっている。冴えないOLとムショ上がりのチンピラ。交わるはずもない二人が点で繋がる序盤から既にドキドキしてしまう。何故なら…何故なら…、ヴァンサン・カッセルが魅惑的過ぎるから。無精髭もベタついた髪もゴツゴツした骨格も、どうしてあんなに色っぽいのだろう。ワルい男なのに。無骨で自分勝手で、いつまでたっても犯罪から手を洗えないサイテー男なのに…!あーもう、抱いてホールドオンミー!ヴァンサンに惚れ込みすぎてヒロインであるカルラに二人羽織状態。身も心も完全に彼女に憑依しながら観てしまった。シケた日常と孤独の中に生きていたカルラ。彼女が男に惹かれやがては犯罪にまで荷担していく様にしんどいくらい共感した。わかっていてもやめられないとはこういうことよ…。男にトキメくたびニヤケ顔を噛み殺すエマニュエル・ドゥヴォスが最高。イケてない女の所作を心得ている。じわりじわりと血色が増していく彼女からも目が離せなかった。「リード・マイ・リップス」それは読唇術のことを指している。難聴のカルラが彼の唇を読むシーンが一番の見せ場。ラブシーンなんてほとんどないこの映画の官能を一手に担う。血が滴る男の唇を、女が舐めるように目で辿る。スリリングかつ甘いロマンス映画史に残る名シーンだと思う。二人を待っているのは破滅だろうか。行き着く先は地獄かもしれない。だからなんだって言うんだ。汚れた手でもぎ取った愛の結末は、圧倒的に幸福だった。
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