潮騒ちゃん

アバウト・レイ 16歳の決断の潮騒ちゃんのレビュー・感想・評価

アバウト・レイ 16歳の決断(2015年製作の映画)
3.2
手堅いキャストとテーマ。これだけの一流どころを揃えていれば平均点以上は確実だよな。と、思っていたのだけれど…。個人的にはあと一歩好きになれない映画だった。未成年のトランスジェンダーとその家族。彼女たちのすったもんだを喧しくそして温かく描きたかったのだと思う。出したかった色合いの方向性は伝わる。我が子の決断に揺れ動く母は自らの身持ちの悪さに邪魔をされ物事をうまく進められない。レズビアンである祖母は理解がありながらも孫娘が性別を変えることには難色を示す。各々が自分自身の尺度でバラけた愛情をぶつけ合う様子は確かに真に迫っているし人間味たっぷりでよろしい。女だらけ特有の話がぜんぜん前に進まない感じもうまく出ている。ただ、そこに差し込まれるユーモアと深刻のバランスが気持ちよくない。何故だろう、どのシーンを見ていても座りが悪かった。そのストレスこそがこの映画の醍醐味なのだろうか。それに加え物語の中心にいるハズのレイがずーーーっとかやの外に追いやられている状況もたまらなくしんどい。唯一ブレないレイだけがこの映画の芯をたったひとりで支えているようで苦しかった。クイッと顎上げるエル・ファニングがたまらなくカッコイイ。ここ何年も「ガーリー代表」を努めている彼女がこの役を演じることの意味は大きいと思った。女の子の白さと柔らかさで覆われた男の子。自分を生きるレイは、生き物としてとても魅力的だった。
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