潮騒ちゃん

スマグラー おまえの未来を運べの潮騒ちゃんのレビュー・感想・評価

4.4
何故見逃していたわたし…!こんなにも好みな映画を!公開当時はおそらく「うーん妻夫木かー、何やっても顔カワイイからなー」などと舐め腐っていたのだと思う。まずは妻夫木に土下座したい。ごめんなさい!ちゃんとブスだった!裏で闇な世界を泳ぎ狂うメジャーな役者たち。見たことのない表情。はっきり言って釘付けだった。どこをとっても野蛮でユニークで猛烈に刺激的。ここぞとばかりのスローモーションにも血が沸いて仕方ない。惜しみなく注がれる痛みと快感にわたしは終始熱狂していた。正真正銘、痛で快だった。とにかく役者たちが全面的に爛々としているのが嬉しい。ひとりづつ語りたいのをグッと堪え、ここはひとつ安藤政信にしぼろうと思う。わたしと同年代の女子は彼について聞かれると大抵「昔めちゃくちゃ好きだった」と答える。そう、みんな政信に恋してた。いつからか彼はその甘いマスクを封印しナイーブなイケメンから離脱。本人の人柄から察するに居心地が悪かったのだろう。キレイな顔に似合わず政信は風変わりで不器用なのだ…キュン。そんな彼が出会った「背骨」というキャラクターは、まさに運命の役だったのだと思う。艶めいた肉体と金髪。舞うヌンチャク。引っくり返る目玉。思い切り歪んだその表情の、なんと美しいことよ…。無慈悲な殺し屋である背骨は心身共に激痛を知る男だ。政信本人が持つセンチメンタルが背骨をさらに強靭に、そして脆くさせていた。素晴らしき熱演。そして合致。『痛みに耐えてよく頑張った感動した・妻夫木』と『どこまでもヤレてしまうヤリすぎ長男・高嶋政宏』の二人が政信に続いてMVPかな。思い返せばわたしは十代の頃「鮫肌男と桃尻女」が大好きだった。何度繰り返しレンタルしたことか。「スマグラー」で体感した飛ばされっぱなしの2時間弱は、鮫肌の衝撃を蘇らせてくれた。余韻に痺れた若き日のわたしが目を輝かせている。映画のラスト、ポケットに残る仁義が懐かしかった。
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