まちゃん

ガス人間第1号のまちゃんのレビュー・感想・評価

ガス人間第1号(1960年製作の映画)
3.9
不可解な連続銀行強盗殺人事件が発生する。懸命な捜査の結果、容疑者として日本舞踊の家元・春日藤千代が浮上してくる。警察は藤千代の身柄を拘束するがそこに真犯人だと名乗る男が現れる…。「ガス人間第一号」というタイトルからは想像もつかない深い人間ドラマだった。八千草薫演じる藤千代の凛とした気品のある佇まいはこの世の者とは思えない。舞踊シーンにかなりの時間を使うが神秘的な風格のある美しさに引き込まれた。この藤千代と人体実験の犠牲になったガス人間・水野との悲恋がこの作品のテーマだ。怪物と美女の恋という事ではオペラ座の怪人を思い出す。しかし大きな違いが藤千代が没落した存在だという所だ。一方の水野も人体実験によって人生を狂わせて犯罪者に堕ちている。2人からは希望のある未来は感じられない。滅びゆく者に見出す美。この日本的な感覚を日本舞踊を使って表現するセンスには感心した。水野を唯一の観客として行われる最後の舞「情鬼」は幽玄の美という言葉を思い出させる素晴らしいものだった。切ないラストシーンも印象的な傑作。
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