アニマル泉

新宿マッドのアニマル泉のレビュー・感想・評価

新宿マッド(1970年製作の映画)
4.3
ヌーヴェル・ヴァーグがパリを活きいきと撮ったように若松孝二は新宿を撮った。本作の主人公は「新宿」である。若松は「新宿は差別しない街」だという。ゴールデン街、南口大ガード、よく知っている白銀公園が写されてビックリした。
演劇青年が惨殺されて田舎から出てきた父親が犯人を探して新宿を彷徨う。「田舎」と「都会」は若松の主題だ。男手で25年間郵便局に勤めて息子を育てた父親がフーテンに翻弄され、謎の集団「新宿マッド」にリンチされる。警察権力にも邪魔者扱いだ。父親は息子たちの革命思想を幕末の維新や坂本龍馬になぞらえて理解しようとする。血だらけになりながら父親は新宿マッドに「お前達は何をやりたいのか?」を問う。戦争世代である父親の迫力に新宿マッドは怯み、加害者と被害者の関係が逆転していく。父親がここで新宿マッドに問うているのは革命の主体性の問題だ。本作の当時、若者は革命の希望に燃えていた。国家と社会を変えようと本気だった。しかし革命の火は燃えない。その苛立ちが脚本の足立正生にあると思う。革命の主体性はどこにあるのか?父親の問いに新宿マッドは答えられない。父親と新宿マッドの関係は「大衆と前衛」の関係である。革命への苛立ち。若松は「怒りが創作を生む」と言う。やがて足立はパレスチナへ旅立つ。
革命の武力闘争と軍部の暴力装置が対比される。裏切りとスパイと特高警察。
全編にロックが響く。若松は映像のフラッシュバックを多用する。白黒シネスコ・パートカラー。別タイトルは「新宿フーテン娘 乱行パーティー」
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