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預言者のkuuのレビュー・感想・評価

預言者(2009年製作の映画)
3.7
『預言者』
原題Un Prophete.
製作年2009年。上映時間150分。

マフィアが支配するムショ(刑務所)へと送られたアラブ系の青年が、壮絶なサバイバルを経て自身のファミリーを形成する姿を活写するフランス作品。メガホンを取るのは、ジャック・オーディアール。
主演は、本作で本格的に俳優デビューを飾り、セザール賞初となる主演男優賞と新人賞のダブル受賞という栄誉をつかんだ新星タハール・ラヒム。

傷害罪によって禁固6年の刑を受け、ムショへと収監された無学で孤独なアラブ系青年のマリク(タハール・ラヒム)。
そこじゃ彼は、所内を牛耳るコルシカ・マフィアのボスであるセザール(ニエル・アレストリュプ)から殺人の指令を下されちまう。
圧倒的権力を誇る上に冷酷非情な彼に逆らえず、殺人に手を染めるマリク。それを機にセザールたちの手下として動きながら、読み書きや生きるすべを学んでく。
徐々に所内で独自のコネクションを築き上げていく彼は、ある秘めた計画を進行させていくが。。。

今作品はションベン刑でムショにぶち込められたアラブ系の意気ごしのある19歳兄ちゃんマリクと、コルシカン・マフィア(コルシカ島はイタリアのシチリア島とならんでマフィアの根城として有名な場所厳密にはマフィアとはシチリア島を拠点としとる犯罪組織を指すし、コルシカ島のグループはマフィアとは呼ばへんが、俗称をそのまま使用する)の温かい交流をを通したヒューマンドラマに部類されるかな。状況からしてマルクは最初から窮地になるのは分かる。
出所するにはションベン刑6年。
ダチが必要なマリクは糞溜めに順応するっため、
自らの共通の出自・慣習・言語・地域・宗教・身体特徴などによって個人が特定の集団に帰属している者達とは(エスニシティ)異なるコルシカン・マフィアのグループのパシりになる。ムショをシメとる(牛耳ってる)セザールは、マリクがアラブ系やと云うのを活かし、ムショ内の勢力を拡げようとする。

物語の大部分は、人間関係と暴力からなる。
よくある設定やけど、本作はただ単に暗く深刻なものとしては描かず、リアルながらスカッと爽快さでもって描いてるかな。
しかし、マリクに課せられる過酷なミッションはパシりからリアルやけどショボい暗殺までと広い。
ファーストミッションが一番過酷な殺しで、マリクと同族のアラブ系収容者の殺しで、ある意味マフィアがマリクに『わからせる』イニシエーションとして機能しとる。
(日本の場合は、はじめは、金、女などで釣ってから、このイニシェーションをする常套手段)
その殺しかたは、口に入れたカミソリで相手のノドを掻っ切るというもの。
殺し方に芸術性が無いしショボいが妙にリアルやった。
此処からマリクには様々なミッションが与えられ、それをこななさな、この場所じゃ生き残きのこれへん。
ミッション完了の暁には、やはりマフィアはマフィアだけあって(日本のその筋でもかな)、ええ働きしょったモンには褒美を。
マリクは炊事係とかを与えられ行動範囲が広がっていく。
映画を観ていて、同じ視点を共有してっからは、めちゃ楽しい。
コルシカン・マフィアからある程度信頼されたマリクは、独特の立ち位置を見つけてく。
若いのにやるやんマリク。
バックにマフィアでアラブ系と云うんはトリックスターや。
後に、ジプシーの運び屋ジョルディとムショ内での『ビジネス』を始める。んでもって、アラブ系のリヤドから文字を学び、友となる。
紆余曲折ありムショ外の領域も手を広げていくマリク、そこに壁が立ちはだかる。
セザールの存在。
セザールがいる限り、マリクは本当の自由が得られへん。
こっからクライマックス、どうなるか気になったならばどうぞ見てくださいな。
本作品は、アクションって云う味やと地味やけど、そのアクションの必然性とリアルなムショの中を描いてるん凡百のアクション映画に負けへんもんはありました。
クライマックスのドンパチの恍惚は、マリクは殺しをしながら微笑んでいる演技で、かなり伝わった。 
一人のギャングスタの誕生を描いたピカレスクロマン作品やと思た。
倫理的な葛藤もなく、鑑賞者が善人でも素直に主人公に共感できる作品ちゃうかな。
小生は、悪人やしそう勝手に思ってます。(悪人なんかいっ)
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