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燃えつきた地図のRのレビュー・感想・評価

燃えつきた地図(1968年製作の映画)
3.7
勅使河原宏監督+安部公房原作の一連の作品の中で、若干好みから外れるのがこの作品。なのに、なぜか時おり無性に見たくもなる。もう一度見たらもっと楽しめるのではないか…と。けど毎回同じくらいの楽しめ度笑 まぁそこそこは楽しめるねんけど。ストーリーそのものは途中までは直線的に進んでいきます。失踪した夫の行方を捜してくれと興信所に依頼が来たため、社員のひとり(主人公だが名前は最後まで出てこない)が調査を進めていくというもので、ほぼ全編手がかりを追おうとしたり、関係者に話しに行ったりするプロセスが描かれていく。けど、おそろしく成果が上がらず、むしろ失踪者の謎が広がっていくばかり。唯一の手がかりの椿という喫茶店に行ってみても店員が協力してくれず、何もつかめない、駐車場でバッタリ会った失踪者の弟(ヤクザ)は兄の日記を主人公に渡そうとするが、その前にゴタゴタに巻き込まれて殺害される、奥さんに話をしに行っても本当に夫の居場所に関心があるのかどうかわからないほど心配してる様子がない。この奥さん、市原悦子が演じてるので、喋り方オモロイ上、真っ昼間からビールばっか飲んでて、可笑しくて笑ってまう。ちなみに、名無しの主人公を演じるのが勝新太郎。太った体のサイズに全然合ってない狭っ苦しい車で、情報を求めていろんなとこに移動するんやけど、逆に自分の立ち位置がどんどん危ういことになっていく。それでも調査を続行する主人公は、やがておそろしく意味不明な状況に追いやられていく、という展開。テーマとしては、巨大化しゆく砂漠のような都市のなかで、人間のアイデンティティがあやふやになり、自分の本心を誰にも語らぬ間に、何が本心かも分からなくなり、よって、そもそも根底に基盤として何が存在しているのかが不明瞭な人間関係というもの自体が存在し得なくなっている様子を、じりじりあぶり出していく。そんななかで何らかの行方や方向を求めることがいかに困難であり、不毛であるかをものすごい徒労感とともに伝えてくる。って書くと非常に面白そうな作品に思えるのだが、実際は、見るの結構シンドイ。理由は、シーンシーンにストーリー全体としての有機的なつながりが生まれないから。断片断片が孤立してて、明確な一貫性がないまま進んでいくのを、淡々と追いかけていくだけ。どこかに向けて進んでいってる感じがほとんどない。まさに地図のない迷宮。しかも、人々の会話自体も、一見噛み合っているようでぜんぜん要領を得ないので、見てる側がうまく消化できない。始終そんな感じなうえ、演出上、映像がどんどん見にくくなっていく。さまざまな遮蔽物によって会話してるふたりをちゃんと見せなくしていく。なので、どんどん人物から心が離れていく。つまり、後半に行けば行くほど、面白さが薄れていくのです。その果ての、白いデカブリーフ!デカい!! どんだけデカいねん!!! パンティもどデカい! いまとぜんぜん違う! すげー。と思ってたら、さらに不気味にネガ反転、そっから、おーーーーえーーーーこのエンディングーーーーー!!! 面食らってあたふた。うーん。面白くなくはないんやけどなー。昔、原作を読んだのだけど、小説の方がぜんぜん面白い。まーそのうちもっかい見てみよう。ちなみに、同監督&同原作だと、砂の女は原作・映画共に抜群の面白さ、他人の顔は小説は読みにく過ぎるが映画は最高。いろいろあるねー。他人の顔もひさびさに見てみよーかなー。
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