Ricola

男はつらいよ 寅次郎真実一路のRicolaのレビュー・感想・評価

3.5
今回は最初から叶わぬ恋だというのは、だれの目から見ても明らかである。寅さんのその淡い想いは、優しさとなって相手に届く。


丸の内の証券会社でバリバリ働く男とひょんなことから知り合いになる。彼は寅さんとは真逆の生活を送っており、彼の会社に訪れた寅さんはどう考えても浮いた存在である。でもさすが寅さんは、御礼の品にバナナを持っていき、そのバナナが手持ち無沙汰になるかと思いきや、煮詰まった会議でのちょうどいい糖分摂取として役に立つのが笑える。

今回のマドンナは大原麗子。声からの登場ということは、声が特徴的だからである。また焦らすように、彼女の姿がはっきり見えるのも遅い。寅さんが駄目だとわかっていても惹かれてしまうこの恋は、いつも以上に彼を自制させる。

マドンナとは旅先ではなく地元の近くで出会う。そして彼女と旅に出るという珍しい展開。そんなふたりきりの状況でも寅さんは紳士で、自分の気持ちよりも彼女のことを優先する。いつも優しくて人情深いが、この作品では特にそれが強調されたようである。
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