Ricola

ハズバンズのRicolaのネタバレレビュー・内容・結末

ハズバンズ(1970年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

くだらないことでずっと楽しめるような仲良し4人組だったのに、急にそのうちの1人が亡くなってしまった。その現実を受け止めきれない男たち。ホモソーシャル的な結びつきの脆さといったそんな単純な話なだけではなく、喪失との向き合い方や人生そのものを見直すといった核の部分に実は差し迫っているような作品だと思った。


27歳を過ぎると時の流れが速くなり、35を過ぎると足にくると彼らは冗談っぽく言うも、若い頃を懐かしみ当時の自分たちを羨ましく思っているような言い振りに聞こえる。それは体力の問題以上に何も考えずにじゃれ合っていたあの頃に戻りたいからではないだろうか。

親友が亡くなったというのに、葬式の帰りでは誰も悲しさを浮かばせずに、故人のことを冗談混じりで少し話すだけで、何とでもないというように、ふざけ合ったりスポーツの話をしてスポーツに興じる。さらには酒に溺れて騒ぎ、ロンドンにまで飛んでいき賭け事と女に明け暮れる。

ハリーは妻を捨て、というか投げ出し、歯科医のガスも仕事を放り投げて享楽にふける。それでも不安感や虚無感が拭いきれない。

人目を気にせず大笑いして競歩で競ったり、突き飛ばし合う。
ふざけることしかできない彼らに、突然不安が襲いかかる。それはなぜなら喪失感と向き合っていないからかもしれない。急に怒りが沸き上がってきたり、悲しみや虚無感に襲われるのは、娯楽などで気をそらしていても限界があるということなのだろうか。
だから「本気」になってしまうことで、現実に直面させられることを恐れているようだ。

これからまたどんどん失っていくものが増えていくことへの不安や悲しみは、どれだけ気をそらそうとしても隙あらば襲いかかってくるのだ。
まだよちよち歩きの娘がこちらに向かってくる。エンエン泣く娘にはっとさせられる。このラストシーンでぐっと現実の前に引っ張り立たされたような気持ちになった。
Ricola

Ricola