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蛇娘と白髪魔のMOCOのレビュー・感想・評価

蛇娘と白髪魔(1968年製作の映画)
2.5
「本当の人間の美しさっていうのは顔や形よりむしろ心の問題なんだよ」


 1962年『ロマンスの薬』で『なかよし』からデビューした楳図かずお氏が1965年から1968年にかけて発表した漫画の中から『赤んぼ少女』をメインに『うろこの顔』『紅グモ』の話を織り混ぜて1968年に製作したのが『蛇娘と白髪魔』です。
 楳図かずお氏の漫画の初めて実写モノクロ映画です。作品の中ほどに楳図かずお氏本人がタクシー運転手で出演して、孤児院のお兄さん役で平泉征さんが出演しています。

 1953年(昭和28年)に手塚治虫氏が少女雑誌に『リボンの騎士』を連載したように、1960年代の少女漫画はちばてつや氏や松本零士氏など男性作家によって描かれていて、『紅グモ』『赤んぼ少女』『うろこの顔』も少女フレンドに掲載された女の子向けの漫画です。私は楳図かずお氏の漫画は少年サンデーコミックスで「黒いねこ面」「笑い仮面」「猫目小僧」「紅グモ」を読んで少年サンデーで「アゲイン」「まことちゃん」「漂流教室」を読んだ世代ですが初期の怖い話を後々少女雑誌連載漫画と知り驚いたものです。


 両親が解かったことで孤児院「めぐみ園」で育った少女小百合は南条家に引き取られるのですが、生き物の様々な毒の研究をしている父はその夜から突然7~8ヶ月の海外出張になり、小百合は数ヶ月前交通事故に合い、頭が少しおかしい母とお手伝いのしげさんと生活することになります。小百合は家にたまみという姉がいることに気が付くのですが、母からは父に内緒と言われます。
 小百合はたまみの素行がおかしいことに気が付きます。普段は普通なのですが、体はウロコで時々蛇のような顔をしているのを見てしまうのです。たまみは小学生の時に蛇に噛まれたショックから自分が蛇だと思い込むようになり、2年ほど前に治療のため施設にいれたのですが、母が内緒で連れ帰っていたのです。
 小百合はたまみの顔に大きなアザがありそのアザを隠す為に精巧な皮膚を着けていることを知り気の毒に思います。その夜から白髪婆が現れるようになり小百合を襲ってくるようになります。

 ある夜小百合は「めぐみ園」を訪ね赤ちゃんの時に自分が取り違えで違う家に行き両親が亡くなり園に来たことを知ります。たまみは姉ではなかったのです。
 たまみと白髪婆は仲間でたまみは美しい小百合を妬み小百合の顔に傷をつけることが目的で白髪婆はたまみが受け継ぐ財産の半分を手にいれる事が目的のお手伝いのしげだったのです。
 罠だと知りながら園のお兄さん=たつやと園から屋敷にもどった小百合達は白髪婆に縛られ屋敷に火をつけられ母共々焼かれそうになるのですが3人ともなんとか屋敷から逃げ出します。
 一人になった小百合をしげが襲ってくるのですが、小百合を守ろうとする気持ちが芽生えたたまみは小百合のために命を落とし、しげは駆けつけた警察に逮捕されます。
 病院で目をさました母の記憶は交通事故前に戻り小百合は幸せに暮らすことになります。

 「蛇娘と白髪魔」は映画のあと1968年に漫画化されているのですが漫画の方が楳図かずお氏の怖い世界観があります。
 実写で楳図かずお氏の描く瞳の大きな美少女を表現するのは難しいかも知れないのですが登場する3人の女の子はかわいらしい顔をしています(3人目の女の子はお人形の精霊?です)。当時怖い映画を見慣れていない子供達にはとても怖い映画だったのかもしれません。

 さすが湯浅憲明監督、オープニングの魚?の造形物はガメラのような顔をしていました。
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