優しいアロエ

ファニーとアレクサンデルの優しいアロエのレビュー・感想・評価

ファニーとアレクサンデル(1982年製作の映画)
4.4
〈5時間越えのスルメ映画〉

 クリスマスイブの夜。裕福な大家族は食卓を囲み、大広間で読み聞かせに集まる。これらは『野いちご』や『叫びとささやき』などにも見られたが、ベルイマンの心象風景なのだろうか。それはもう多幸感にあふれ、『フェリーニのアマルコルド』や『ROMA/ローマ』を想起した。

 だが、タイトルが示す通り、次第にファニーとアレクサンデル、そして2人の母親の物語へと移っていく。

 父が死に、新たな父親となるのは敬虔なカトリック主教。彼はアレクサンデルたちを束縛し、ときに痛めつけることをも辞さない。これも神父の家庭に生まれたベルイマンの記憶に基づいているのだそう。ポスターになっている「窓際に腰掛けるふたり」は、不条理な環境に幽閉されたことの象徴なのであった。

 5時間に及ぶ鑑賞を終えた“達成感”を本作の満足度と混同せぬよう、ゆっくりと消化し、また部分的に観返していきたい。間違いなく2回目以降味わいが増すタイプの作品だ。
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