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渚のシンドバッドのshxtpieのレビュー・感想・評価

渚のシンドバッド(1995年製作の映画)
4.0
ゲイの少年、強姦された過去をもつ少女、そして母子家庭の少年。ブルーにこんがらがった 3 者を中心とした(学園)群像劇は、彼、彼女らがかかえた問題や複雑な事情を何も解決しないままおわる。しかし、それでいいのだ。『渚のシンドバッド』はそのようにいうかのようだ。そうだ。それでいいのだ。

『渚のシンドバッド』のショットはどれもうつくしいとかうまいとはいいがたい。それゆえ、多用されるフィックスの長回しは観客にどうにも座り心地のわるいおもいをいだかせる。一方で俳優たちの演技はごく自然かつ即興的で、じつにいきいきとしている。なまなましい演技はフィックスの長回しにより、まるで記録映像のように、その雑味をうしなわないまま採取されている。ドキュメンタリー的な手法は必然なのだ。

いくつかのすばらしい、うつくしい瞬間が『渚のシンドバッド』にはある。岡田義徳が恋に落ちたことを自覚する冒頭のシークェンス、岡田が草野康太におもいをうちあけるシーン、岡田と浜崎あゆみが「あーとかうーとか!」と叫ぶシーン、岡田と浜崎が夜の浜辺に座っているシーン……。演技と撮影手法が見事な画をうんだ場面だ。ほかにも、いくつもすばらしい瞬間がある。『渚のシンドバッド』はみずみずしい、静かな傑作である。
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