このレビューはネタバレを含みます
【余談】
先日タテタカコさんのライブを観に行きました。半年前にも行ったのですがその夜は帰って「誰も知らない」を観ました。
ライブで聴いた「宝石」と、映画で聴いた「宝石」。
その情景をそれぞれに重ねてみたり。
いい夜でした。
そして今回、何を観ようと思うも、タテタカコさんが関わっている作品が他に見当たらなかったので、彼女の出身地、長野県飯田市を舞台にした作品を選びました。
それが本作「母べえ」です。
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母べえのべえは方言とかじゃなく、主人公の吉永小百合(母べえこと野上佳代)の家庭内で使われている愛称という設定です。なのでお父さんは父べえ、長女の初子は初べえ、次女の照美は照べえ。あらすじなんかには書いてあるけど、これは父べえの野上滋の方針で、”日々の営みにユーモアを”みたいな想いを込めて、そう呼び合っている。
だからそういう意味ではひょっとすると、「母たん」でも「母ピヨピヨ」でも、「母りーぱみゅぱみゅ」でもよかったわけで、なんなら母りーぱみゅぱみゅのほうがユーモアとパンチは効いてる気がしたけど、戦時中のお話なのでちょっと無理があるな。なんて、ぼんやり思いながら眺めてました。
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余談が過ぎました。
これまで吉永小百合作品にほとんど縁が無かった為、今回の母べえがほぼ初見と言えると思います。それが果たして吉と出るか凶と出るか。
正解は・・・末吉(๑´ㅂ`๑)くらい☆☆
や、もちろん!このうえなく一本筋の通った母べえで、役柄人柄も、ちょっと気い抜いてると見惚れてしまうくらい素敵を地でいく方なのだけれど、正直AQUOS感半端なく感じてしまって、いつ「シャープ。」って口を滑らすんじゃないかと、ヒヤヒヤしてました。慣れるのに時間かかった〜(`∀´)
他のキャスティングも抜群によくて、特に好きだったのが妹の照べえ役の佐藤未来ちゃん。とりとめなくなんでもないところで、なんの脈絡もなく母べえに「だーいすきー!」って抱きつくシーンが2回くらいあって、めちゃくちゃいいシーンだなあって感じました。
日常の中で自分の身近な人、愛する人をたまらなく愛おしく感じて軽くテンション迷子になるみたいな事って、ままあるというか、や、(ないんですけど笑)、ままあったなあと笑
それを客観的視点で見るとこんなにもグッとくるのかと。愛が漲る幸せな光景って、見てて心があったかくなります。単純に羨ましんだろな(๑´ㅂ`๑)
ゆうて。
浅野忠信の役柄もとてもよかったです。謙虚で愚直で賢で、ときどき突っ走ってしまう勇ましい感じとか、一生懸命で優しい感じとか。見てくれもインテリばっちし感出ててカッコよかった。てい良くチャコちゃんとくっつかない感じとか、佳代とうんちゃかかんちゃかならない感じとかも、人として素敵だったなーって。
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ラストのエンドロールへの入り方が個人的には衝撃的で驚いちゃいました。(ええええ!)って心の中で、えを4つ並べました。なんて悲痛な収め方するんだと。戦争への憎しみつらみを、生の幕切れに投下する終わらせ方。切なさもどかしさは確かにあったのだけど、個人的には好きじゃなかったなあ。思想を譲らず家族を守る事が出来なかった父べえを認めたくない気持ちの方が勝ってるし、例えそれを母べえが1000%認めてたのなら尚のこと、ぼくはこの映画のラストが憎い。
憎い。
けど、その憎さこそがこの映画の本質なのかもしれない。
となるのなら、山田洋次がこのレビューを読んでムフフとしたり顔になってるのが眼に浮かぶから余計に悔しいね。ハハハー(渇いた笑い)