このレビューはネタバレを含みます
ガイリッチー作品はこれが初見なんだけど、なんとなくタランティーノをスタイリッシュにした印象を受けた。
小気味良いテンポや気の利いたセリフ回し、洗練された構成、どこか抜けた悪党たちの群像劇、計算されたラストの収束感など、共通点は多いと思う。
裏社会の顔役レニー、レニーの右腕アーチー、レニーへの借金をユーリから奪うワンツー、その仲間でゲイのハンサム・ボブ、ロシアン実業家のユーリ、ユーリの手下ビクター、チェチェン帰りのターミネーターのようなチェイサー二人組、みんなキャラクターが立っていて、それぞれのパートも引き込まれる。
でもいかんせんラストがどうにもパッとしない。
レニーの人道にもとる本性をアーチーが看破して…、という展開はいいんだけどそれまでの行動でレニーがそんなにイヤな奴だとは感じないのが痛い。
悪党は悪党なのかもしれないけど、なんか嫌いじゃない。
だから最後に鉄槌がくだっても爽快感が全くないし、そもそもそこまでの因果関係の描写が不足していて必然性も感じられない。
しかしアーチーの立場からしたら審判の槌は鳴らされて然るべき、と考えるのは解らない話ではない。
だったら、アーチーの私怨を晴らしつつ鑑賞者も満足できる制裁を演出すればいいのであって、そここそが腕の見せどころではないのだろうか。
性悪女会計士のステラもユーリも、最後の扱いはずいぶんと雑。
ユーリがステラのところで「幸運を呼ぶ絵」を見つけて、手下のビクターを呼びつけて、その後どうなったのか…。
タランティーノ好きな俺にとってこの作品は、終盤付近まではものすごくツボでグイグイ引き込まれた。
けど、結果としてみたらなんとも消化不良。
この手の映画のラストで「やり残し」を感じさせたらもうその時点で失敗といっても言い過ぎではないと思う。
要するに詰めが甘いのだ。
あとタイトルもイマイチかなぁ。