emi

スペース カウボーイのemiのネタバレレビュー・内容・結末

スペース カウボーイ(2000年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

クリント・イーストウッド監督作品のおじいちゃん映画という時点で、この作品が私のツボを抑えているのは言うまでなく…しかしそこ以外の要素も大変魅力的。人生の大半この作品を知らずに生きてきたことが真面目にショックだった1本。比較的コメディ色も強く、私が思うイーストウッドとは少し毛色が違う作品でもあった。

本作に登場するパイロットチーム”ダイダロス”の面々、キャストは主人公フランクにクリント・イーストウッド、腐れ縁の相棒ホークにトミー・リー・ジョーンズ、脇を固めるジェリーにドナルド・サザーランド、タンクにジェームズ・ガーナー。全員が”それなりの年齢”で老眼が酷く視力検査でズルをするし、女性スタッフを口説いたりもするけど、全員が確かな技術を持っており自動操縦頼りの若造には負けない。軽口を叩きながらも互いに強い信頼関係で結ばれていてとてもかっこいいのである。チームダイダロスのかっこよさが本作一番の魅力。
バディ物としての側面もあったりする。中でも若き日に喧嘩しながらも切磋琢磨していたフランクとホークの関係性は特に良い。初見の午後のロードショーでは冒頭シーンがだいぶカットされており、若き日の彼らが一部分しか描かれず、2人の関係性に少々説明不足を感じていたけれど、後に購入したBlu-rayを観て納得。2人の印象も、延いてはエンディングの印象も大きく変わってしまった。午後ロー版もテンポが良くてとてもいいのだが、楽しむならやはりノーカットがおすすめ。

2人は仲良しじゃない、どちらかというと仲は悪い。まさに好敵手的な関係だけど、お互いの事は言葉にせずとも一番分かってるし認め合ってる。そんな描写が上手く脚本の随所に練り込まれているのがたまらない。フランクの奥さんに彼(フランク)のことを頼まれた時のホークの表情や受け答え、ホークの選択を尊重するフランク…秀逸な描写が沢山あるし、それぞれの気持ち、台詞ひとつ表情一つでありありと伝わってくる。どこをとっても素晴らしい。
宇宙での活動がメインミッションだけど、そこに至るまでの人間ドラマが実に緻密。バディ物、チームの共闘もの、コメディ、恋愛と要素全部盛り、なのにしつこくないのが凄いところ。もうひとつ意外なところでは主人公フランクとかつての上司ガーソンの関係性もまた良い。『ザ・ロック』のメイソンとウォマックのように、ガーソンは保身が大事なずる賢い存在で部下をも上手く利用するのでフランクとの仲は最高に悪い。悪いんだけど煙たい存在ながらもフランクの実力は認めてるという。この2人の描写はそれほど多くはないけれど魅力的な要素だった。

突飛な設定でも彼ら唯一の欠点(?)である”加齢”が一番目立つ訓練シーンをコミカルに描くことで退屈も中だるみもせず、むしろお茶目なダイダロスのキャラクターが表現されていた。生意気でナメ腐った態度で絡んでくる若造を経験で黙らせるシーンも嫌味なく素直にかっこいいと思える。老害感なく展開していき、かつ彼らが年相応でもある描写もしっかりなされているので不思議と非現実感がない。ハリウッド全部盛りで様々な要素が詰め込まれているのに、絶妙なバランスで楽しめるのが本作のすごいところ。まぁ宇宙に行けてよかったよかった、で終わる筈もなく…アイコンには秘密があり更に一悶着あるわけなのだけど、ここからは是非是非作品を観て欲しい。Fly me to the Moonが特別な1曲になること間違いなし。
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