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ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービーのemiのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます


ブルックリンに住む配管工の兄弟、マリオとルイージ。
独立したばかりの2人はCMを作って宣伝をしているものの、仕事の状況は芳しくない。そんなある日、ブルックリンの街で大規模な水漏れが起きていることを知り、2人は修理に向かうが…


この映画の冒頭で描かれるマリオ達の姿は、普段我々がイメージするマリオと大きなギャップがある。

舞台はブルックリンからのスタートで普通に人間達の世界で暮らしている。親とも同居しており自立した生活をしているとも言えず、社会的にも成功していたりはしない。(海外における"親と同居"は、日本以上に独り立ちできていない証として扱われることが多い気がする。)

正直「こんなに世知辛い感じで始まるのかよ…。」と、ちょっとショックを受けてしまったのだけど、最後まで観てみると見事"ヒゲはあれども大人になりきれない、マリオの成長譚"に仕上がっていた。

ゲームの中のマリオは最初からピーチを助けに行く勇気あるヒーローだけど、今作では勇気あるヒーローになるまでの姿を描いている。

スーパーマリオブラザーズの世界観を多くの人は既に知っているだろうけど、既存イメージに甘えることなく、1つの映画として上手く成立させていると思う。

戦いの影響がブルックリンにまで干渉し、巡り巡って自分たちの住む世界でも英雄になる流れは定番かもしれないけど、とても好きだった。


90分ほどの尺に収めたのは、きっと子供たちでも飽きずに楽しめる配慮ではないかと思う。世界のスーパーマリオブラザーズなのだ、ファンの年齢層は幅広い。子供向け過ぎず、往年のオタクだけが楽しめる作りでもいけない。そんな作品愛が輝く作りだった。


一番印象に残ったのはやはり音楽。
8bitで楽しんでいたお馴染みのテーマ、今でも多くの人が知る所だけれど、チープすぎず、かといってかけ離れた現代的すぎるアレンジでもなく、当時の良さを上手く残した。

遊んだことがある人なら絶対に聞いたことがある、ワールドBGMの数々は聞いているだけでわくわくする。

特にクッパとカメックがクッパ城のテーマをピアノで連弾するシーンは、単なるBGMではなくクッパの心理描写の一部として上手く機能していたのが面白い。
エンドロールにも散りばめられた名曲の数々、最後まで楽しむことができた。

それ故に残念に感じたのは、既存名曲の引用だった。
『Holding Out for a Hero』、確かにシーンに合ってはいた。場面説明するのに一役買ってはいるけれど、歌詞のメッセージ性を利用しなくともマリオのオリジナル楽曲だけでも十分勝負できたのにと思う。

元々日本ではなく海外を意識した作りだろうし、所謂テッパンなのかなとも思うけれど…、個人的にはこの安易な演出は本作に限らずそれほど好きではない。


映画オリジナルの設定で良いと感じたものがある。マリオの"きのこ嫌い"である。
きのこを苦手な食べ物にしたことで、苦手を克服する、食べられるようになることでパワーアップ(大きく成長)できる。
ピーチとの特訓で突然強くなるわけではないのが良い。

ピーチ姫はゲームでの印象以上に自立した強い女性として描かれていた。
ポリコレ的なあれかそれかは知らないし、かっこよくはあったんだけど、個人的にはお淑やかで可愛らしい面も描いてあげてほしかったかな。

そういえばピーチの生い立ちも映画オリジナルだと思うけど…きのこ王国のお姫様だけど1人だけ人間の姿をしている理由に触れていたの、とても良かった。

多分幼い頃にマリオ達のように迷い込んでしまった人間だけど、みんなに育ててもらってプリンセスにしてもらったの、という設定。ピーチがきのこ王国を命がけで守ろうとする理由になっていた。


実はルイージ関連のスピンオフ作品は殆ど遊んだことがないので、ルイージのゲーム内キャラクターってどんなだっけ…と、印象が薄いのだけど。
それでもマリオとルイージの「2人一緒なら大丈夫」感が、最後のスターをとったシーンにもよく現れてて、兄弟いいな~って思っちゃった。

クッパはあまりにもピーチに蔑ろにされててちょっとかわいそうだった。
まぁ普段の行いが悪すぎるからなんだろうけど…、プロポーズの予行演習している様子とか可愛かったけどなぁ。

ドンキーコングが出てくるとは思っていなかったので、決闘からの意外な共闘とても好きでした。決闘場の赤い鉄骨も原点の「ドンキーコング」を意識しているんだろうなぁ。

マリオカートのレインボーロードでショートカット!って流れも、マリオカートで遊んでいたら嬉しい演出。
レインボーロードって実際走ってたらこんな風にぐるぐるで、目もチカチカするよなぁって納得してしまった。

再現度でいうとピーチ城はなんか感動だったな。スーパーマリオ64でみたまんまのデザインで。


3Dで表現される多彩な質感はさすがでしたね。
マリオといえばゲームでも結構質感が様々なイメージ。ヨッシー・ウールワールドとか。

きのこ城で大臣たちが評議会の最中に見ているマップが、安易なホログラムとかじゃなくて立体的なブロックアートだったりとか。

ゲッソーのぷるぷる感は、「本物のゲッソーはこんなにぷるぷるなんだ!(本物とは…?」と、感動したし。マリオの帽子は意外とふわふわなんだなぁとか、アップになったプクプク、鱗が激リアルで怖いな、とか…。

しかし映像になるとクッパ城近辺マジで怖い。溶岩のどろどろ感とかひえーってなるし。ホネホネがゆっくり再生していく様子とか。

懐中電灯であたりを照らして怯えるルイージとかは、ルイージ・マンションの世界観を取り入れたシーンなんだろうけど。
建物の中に沢山いるヘイホーとか、そりゃ叫び声挙げたくなるほどホラーだよね。


ところで思わせぶりなエンディングだったけど、続編はあるのかな?
emi

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