emi

星めぐりの町のemiのネタバレレビュー・内容・結末

星めぐりの町(2017年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

豊田の山間で手作りの豆腐屋を営む島田は妻を亡くしてからは娘の志保と二人暮らしである。
ある日、島田のもとに警察官が1人の少年を連れて訪ねてくる。少年はマサミと言い、東日本大震災で家族を全員亡くし、以来、親戚をたらい回しにされていたという。島田の妻がマサミの遠縁にあたることからマサミを預かることになるが…


小林稔侍初主演映画にして黒土三男監督の遺作。

大ベテラン小林稔侍が映画初主演!?と思ったものだが、よくよく考えてみると確かに主演の記憶はない。
個人的には『デパート物語』のイメージが強く、本作を観て流石に歳をとったなぁと感じたが、それもそのはず。もう小林さん80代なのですね…。
映画公開が6年前、作品的には初老男性の設定だと思うので、むしろ若々しさに驚く。

黒土監督は昨年亡くなられ、その際には脚本を書いていらした『外科医柊又三郎』を思い出した。
ほんの小さな頃に観て記憶も朧げだけれど、あれもとても好きな作品だった。

他にも娘役に壇蜜さん、警察官役には『学校の怪談』にも出演していらした神戸浩さんなども。独特のキャラクターなのですぐに気付ける。


作品としては、こだわりの豆腐を作る職人肌の島田と、その背中を眺めながら心を開いていくマサミ。派手な演出こそないが、滔々と沁み渡る豆腐の旨さ、みたいな優しい映画であった。

作中には3.11の映像が使われている。
マサミの家族は津波で全員助からず、彼だけが山の上の幼稚園にいたおかげで難を逃れた。トラウマにより心を閉ざし、喋らず目も合わせず。

当初は困惑するものの、やがて孫ができたじいちゃんのように時に厳しく、時に優しくマサミに接する島田の様子がとても良いのである。

基本マサミは会話を殆どしない。
手負いの獣の如く構うと逃げてしまうので様子を見ながら食事を置いてやり、時に外に連れ出し、こっそり服を買ってやり…マサミの心を徐々に溶かしていく。
サッカーシーンとか同じ年頃の子供と遊ぶマサミにおじいちゃん大興奮。

最初はマサミに苛立っていた娘の志保も歳の離れた弟のようにマサミを心配するようになっていく。

ラストシーンで雨ニモマケズを誦じるマサミ(実は超賢いやん)
豆腐屋になりたいかぁ…んなこといわれたら泣いちゃうよな爺ちゃん。


尺は比較的短め
周囲の人々の描写は殆どフレーバー程度である。撮影地が豊田であるためかTOYOTAアピールが強めだけど、これはなんでなんだろうな。意味深に出てくる自動車会社の社長達…元々町おこし的な映画だったのかも。

作中での時間経過は分からないが、季節も変わっていないし、長くても1ヶ月くらいなのか。
いずれにしてもマサミに心安らげる居場所ができてよかったね!と心温まる作品。
主には小林稔侍ファン向け。
豆腐が食べたくなる。
emi

emi