マヒロ

セルピコのマヒロのレビュー・感想・評価

セルピコ(1973年製作の映画)
4.0
夢を持って警察の仕事に就いた若者フランク・セルピコ(アル・パチーノ)は、配属されたニューヨーク警察が賄賂が当たり前の汚職にまみれた環境で、夢見ていたものとは程遠い場所であることに愕然とする。警察という存在の正義を信じるセルピコは、一人その状況に反発するが…というお話。

セルピコは特段高潔な人間というわけではなく、ただ賄賂を受け取らないという一点だけを頑なに突き通すんだけど、完全に腐りきった警察内ではそれだけでも裏切り行為とみなされ、鼻つまみ者として扱われてしまう。権力側にいながらして権力に怯えながら暮らさなければならなくなり、当然私生活も上手くいかなくなってくる。
命の危険すら感じて諦めそうにもなるが、それでも一貫して自分の信念を突き通す姿は素直に格好いい。

実録物で、映画的な脚色を敢えて避けているのか、派手な展開はあまり無いんだけど、周りに迎合すれば楽なものを、決して折れないという武器一つのみで戦うセルピコの愚直なまでの信念がジワジワと周りを巻き込んでいく様が静かながらアツい。

同じルメット監督×アル・パチーノの『狼たちの午後』の茹だるように暑そうな風景とは正反対の寒々しいニューヨークの風景も、孤独感が更に増す。『フレンチ・コネクション』とかもそうだけど、寒そうなニューヨークが出てくる映画にハズレはない。…という勝手な持論。

(2019.78)
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