砂場

ホフマン物語の砂場のレビュー・感想・評価

ホフマン物語(1951年製作の映画)
4.1
これが配信にあるとは、、、
まずはあらすじから


ーーーあらすじーーー
■第一幕、酒場のホフマンと親友のニクラウス、ホフマンは歌姫ステラに恋をしていた。
ステラがホフマンに当てた恋文を付き人に渡すが、ホフマンの恋敵は恋文を金で横取り、ホフマンのステラへの想いが歌に込められる
■第二幕(オランピア)
物理学者スパランツァーニは娘のオランピアを社交界デビューさせるつもりだった。
スパランツァーニはホフマンを教え子として目をかけていた
ホフマンはオランピアを見て一目惚れ、しかしニクラウスにはオランピアが人形であるとわかっていた。怪しい発明家コッペリウス、いろんなメガネをホフマンに売ろうとするが売れない。しかしあるメガネをかけるとオランピアの姿が見える!すっかり気に入ったホフマンは
メガネを購入。
夜会でオランピアがお披露目、時間が来ると動きが止まりネジを巻き直し。しかし惚れているホフマンにはそれが見えない。
ホフマンはオランピアに愛の告白、しかし彼女は猛スピードでくるくる周り向こうに行ってしまう。
暴走するオランピアを止めようとするスパランツァーニ。
コッペリウスはオランピアの首、うで、足を解体しだすとスパランツァーニは激怒。
メガネを外したホフマンにはようやくオランピアが自動人形だとわかった。絶望のホフマン
■第三幕(ジュリエッタ)
ヴェネチアの歓楽街、ゴンドラに揺られる娼婦のジュリエッタ。ジュリエッタの情人シュレミールと船長は共謀し、ジュリエッタを使ってホフマンの影を奪おうとする。
親友のニクラウスはホフマンが心配。
ジュリエッタの懇願でシュレミールの持っている鍵を巡ってホフマンは決闘、シュレミールを倒す。
しかしジュリエッタはあなたの影が欲しいとホフマンにいい影を差し出してしまうホフマン。
■第四幕(アントニア)
父のクレスペルは愛する娘アントニアに、死んだ母にそっくりなので歌を禁じていた。
歌えば死んでしまう病気だった。その兆候がアントニアにも。
アントニアとホフマンは愛し合っていた。親友のニクラウスはホフマンが心配。ミラクル博士が誰もいないベッドでアントニアを診察。ホフマンにはミラクル博士が死神のように見えていた。
ホフマンのお願いでアントニアは歌を諦める、しかしミラクル博士が巧みに歌へ誘う。
拒んでいたアントニアであるが母の幻影が現れつい一緒に歌ってしまう。アントニアは倒れる、ミラクル博士が死を宣告する
■第五幕(ステラ)
三人の女性を愛したホフマン、歌姫ステラに三人を重ねる。ステラと恋敵が出ていき絶望の表情でホフマンは倒れ込む。
このオペラの指揮者はそっと「ホフマン物語」のスコアを閉じる、メイドイン・イングランドの印が押される
ーーーあらすじおわりーーー


🎥🎥🎥
『ホフマン物語』は作曲家オッフェンバック(1819-1880)による未完のオペラ作品である。
ドイツロマン派のE.T.A.ホフマン(1776-1822)の小説『砂男』『クレスペル顧問官』『大晦日の夜の冒険』
三遍を合体させ、しかも作者ホフマンを主役として登場させるというなかなか奇想天外なオペラだ。
原作小説は幻想譚としてのちにリラダン、ボードレール、ポーなどに多大な影響を与えた。

今作の映画は『黒水仙』『赤い靴』などのマイケル・パウエルとエメリック・プレスバーガーの共同監督。
まずヴィジュアルがすごい、爛熟したような過剰な豪華さで溢れている。ホフマン役とアントニア役は本職のオペラ歌手が歌い演じており、オランピアなどホフマンが愛する三人の女性は英国ロイヤル・バレエ団のダンサーが起用された。(歌はオペラ歌手吹き替え)
流石にダンサーの表現力がすごい。指の先まで精密にコントロールされた動きでありバレエの知見はないんだけどすごさは伝わってきた。

ビジュアル面でもマニエリスム風、ゴシックホラー風、幻想譚風な色彩感覚と意匠はある種のトリップムービー感。
オペラの映画化といってもステージまんまではなく、映画ならではの遥か上方からの撮影や幻想的なギミックなど
ジョージAロメロが本作を見て映画製作を決意したのもわかる。デレクジャーマンなどにも影響を与えているのではないだろうか。

オペラ自体が原作小説からは大きく改変している。作者ホフマンが登場することもそうだけど、オペラ向けにかなりビジュアル面にフォーカスした作りになっていてややイメージ的、抽象的なのでわかりにくい面もありまた原作の陰惨なムードはかなり抑えられている。

映画版を今回初めて見たけど、個人的には『ブレードランナー』味も感じた。特に原作のホフマン『砂男』含めた部分について思いついたことを書いておこう
『砂男』は理系の学生が恩師の娘オランピアを好きになってしまうが実はオランピアは自動人形だったという話。
まさにレプリカントのイメージだ。
ブレランでは目玉が重要なキーとなっている。冒頭の目玉ドアップ、目玉を制作する職人、フォークトカンプフ検査では瞳孔の動きをチェック、ロイがタイレル博士の目潰しなどなど、、、
レプリカントはDNAでも人間かどうか判別できず、目玉が自己のアイデンティティを判別するキーなのだ。
『砂男』では目玉を制作する奇妙な発明家コッペリウスも出てくるし、オランピアの目玉を投げつけられた学生は狂って死ぬのである。
リドリー・スコットはこの目玉に関して『砂男』や映画版『ホフマン物語』の影響を受けていると思う。
どことなく映画版『ホフマン物語』にはSFぽい雰囲気がある。
ホフマンがデッカードにも見えてくる。

好き嫌いが分かれそうな映画だがオペラ好きはもちろん、アート系、トリップ系、SF系が好きな人でも楽しめるのではないだろうか
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