優しいアロエ

魔術師の優しいアロエのレビュー・感想・評価

魔術師(1958年製作の映画)
3.9
〈 真実かハッタリか、魔術師の正体/R.I.P.マックス・フォン・シドー〉

 わたしとベルイマンの関係はちょうど1年前に始まった。『夏の遊び』で虜になり、『第七の封印』『野いちご』で意地悪をされ、『仮面/ペルソナ』で一度距離を置こうという話になった。

 その後、半年ぶりに『仮面/ペルソナ』で再開。私自身、黒澤明との交際を経て撮影美に目覚めたからか、今度は圧倒された。そのまま『叫びとささやき』で狂い落ち、『ファニーとアレクサンデル』で完全に復縁した。
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 さて、いよいよ「神の沈黙三部作」に挑もうと思い立ち、その肩慣らしとして亡きマックス・フォン・シドー主演の『魔術師』を鑑賞した。

 科学が発展し、宗教や魔法にマウントを取りはじめた20世紀半ば。街を通りかかった魔術師一行は、警察や領事にインチキだと疑われ、化けの皮を剥がされそうになる。

 だが、魔術師たちは、それをまんまと返り討ちにしてみせる。ここには、(強引だが)『平成狸合戦ぽんぽこ』を思い出した。近現代に突入しても僅かながら光を灯す魔術の強かさと、しかし狸たちほどに自分たちの立ち位置に強い意義を感じているわけではない気楽な人々をユーモラスに描いている。

 また、ベルイマンの舞台劇的な演出も健在。ギラっとした照明によって、不穏な影を壁や床に刻印する。フレームの外側まで活かした人物の配置はやはり黒澤明のようで、人工的だがクセになる。セリフが多すぎるのが難点か。
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