新潟の映画野郎らりほう

ひゃくはちの新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

ひゃくはち(2008年製作の映画)
4.4
【ステロに曇らぬヘプトミノ】


極度の純潔/清廉性を求められる“アイドル”は『彼氏無し』『ゲップも排便もしない』- そんな嘲弄も出る程の強固ステロイメージで見られている。良くも悪くも虚像/偶像だ。

懸命に白球追いかけ、常に全力疾走し、笑顔絶やさぬ“高校球児”も そんなステロイメージつきまとう偶像の象徴だ。

高校球児は神聖で崇高な存在 - そんなパブリックイメージの信奉者である市川由衣は、世間一般が多かれ少なかれ抱く紋切り思考を誇大凝縮した印象代弁者だ。

そんな、今までずっと偶像を崇めていた市川が 高校球児の実像に触れる…。
その驚きの数々。
あの爽やかな球児が放屁(それも臭いやつ、音もでかい)するなんて…。
あのひたむきな球児が性欲にまみれているなんて…。あの純真な(以下略)。
崇めていた偶像が音を立て瓦解してゆく様が滑稽であると共に 、誰もが持つそのタブロイド思考への疑符提起は鮮烈であり辛辣だ。


鳴り響く公衆電話テレカ排出音の焦燥。望遠で捉えられる練習の激しい動揺、等 痛みの喚起も精良。

紋切り偶像の色眼鏡を外し気付く(今まで見落としていた)本当のひたむき/純真/情熱の強さに胸打たれる。

※08年国内作品ベスト候補




《劇場観賞》