マヒロ

イゴールの約束のマヒロのレビュー・感想・評価

イゴールの約束(1996年製作の映画)
4.0
ベルギーで不法移民へ法外な金額で仕事を斡旋している父・ロジェ(オリヴィエ・グルメ)を手伝う息子のイゴール(ジェレミー・レニエ)は、父の言いつけ通り手伝いをしていたが、ある事件が起きたことをきっかけにそれに疑問を抱くようになる……というお話。

イゴールは酒・タバコは当たり前、父の指示により盗みなどにも手を染めるなど荒れた生活を送っている。父は父なりにイゴールを愛しているような描写も見られるが、息子を自身の犯罪に巻き込み手駒として良いように使っておりどうしようも無い男。
そんな父に従うことに特に抵抗もなかったイゴールだったが、とあるアフリカ系移民との交流をきっかけに徐々に心変わりしていく。

ダルデンヌ兄弟の作品はこれで3作目だが、どの作品も危険な行動や思想のある子供を描いていて、そのどれも周囲の大人の影響によるものであるというところから、未来ある子供達に対する大人の責任みたいなものが軸にあるように思えた。
今作のイゴール君は割と分別のつく年齢であり、自分の判断の元で父からの離反を考えるようになる辺り若干の優しさを感じるが裏を返せばそこまで判断がつく状態にも関わらず父に盲従していたということでもあり、一本間違えたら彼も父のような大人になっていたのかもしれない……という怖さもある。

90分という割と短いランタイムながら、地に足ついた重厚感のある演出とこちらに考えを促すかのような余韻の残るラストの満足感が強い、既に巨匠のような安定感を感じさせられる一作だった。

(2021.138)
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