マヒロ

女は二度生まれるのマヒロのレビュー・感想・評価

女は二度生まれる(1961年製作の映画)
3.5
戦争で両親を亡くし、芸者として様々な男の間を渡り歩く小えん(若尾文子)の生き様を描いたお話。

芸者……と言っても芸事をするというわけでもなく、男の人に支援してもらいながら生きる我々の知るような芸者さんとはまた違ったものらしい主人公の小えん。なんだか計算高い裏のある人間のような気がするが、実は全くそんなことなくて惚れっぽいのが玉に瑕なだけで至って純情な人であるというのがなんだか不思議で面白い。
金持ちの男たちとは割り切って付き合っているのかと思いきや、男らが他の女の元に行ったら悔しがるし、亡くなったら本気で悲しくなるしで本当の恋人のよう。かと思ったらそこら辺で出会った兄ちゃんや純朴そうな学生さんにまでふらっと手を出してしまったりするのでなかなか侮れない。

戦後の混沌とした時代を生き抜くためにある種男たちを利用していく強かさと、それでも垣間見えてくる天真爛漫な可愛らしさを併せ持つ小えんは単純に一言では括れない実に人間らしい複雑な人物像で、それをフラットな目線で淡々と優しく描いていくのがなんとも心地よかった。『女は二度生まれる』というタイトルを体現するかの如く、小えんがある出来事をきっかけに自分の生き方を見つめ直し生まれかわろうとするその瞬間に無情にも思えるほどバッサリと幕を下ろす潔さもまた良し。

(2020.15)
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