優しいアロエ

革命前夜の優しいアロエのレビュー・感想・評価

革命前夜(1964年製作の映画)
4.0
〈革命前夜はいつまでも明けない〉

 ブルジョワ階級に居心地悪く思う共産主義の青年と神経症的な叔母の禁断の恋愛を綴る。ファシズムや共産主義を背景とした作品をつくっていくことになるベルトルッチの原液と云える一品。

 処女作『殺し』はネオレアリズモの系譜にあることが窺えたが、本作『革命前夜』はヌーヴェルヴァーグ、殊にゴダールには影響を受けていそうだ。映画や絵画といった断片的モチーフの引用、ポストプロダクションによる実験的介入が表面を覆っている。ポリティカルな会話がくどくどと羅列するお堅さは、偏にゴダールと云っても60年代半ば以降の彼と近い体温を感じさせる。

 また、「社会批判をしてばかりで、外に出てアンガージュ(社会参加)する気はない」という“知識ごっこ”な若者像は、ベルトルッチ作品を貫いていく。『ドリーマーズ』はまさにそうだったし、極論『ラストエンペラー』も、そんな溥儀があまりに大きく朱い殻から脱却する話ととっていいと思う。

 かくいう私も、政治は記事やニュースを読み投票に行くだけ、映画もただ数を貪ってFilmarksに書き込むだけの状態にある。政治への怒りや映画への喜びが湧いては自分の内側で冷めていく。この繰り返し。アクションを起こすのはもっと知識を蓄えてからと思っていたが、それじゃあいつまで経っても今のままだよな... 革命前夜はいつまでも明けない。(戒め)
優しいアロエ

優しいアロエ