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マジックのhorahukiのレビュー・感想・評価

マジック(1978年製作の映画)
3.8
偽りの仮面

アンソニーホプキンス演じる気弱な主人公が腹話術で狂っていくサイコホラー。監督は『ジュラシックパーク』のジョンハモンドで有名なリチャードアッテンボロー。監督業してたこともアカデミー受賞してたのも知らなかったのだけど、今思えば確かに映画監督顔だわ!🤣

主人公はマジシャン。劇場でマジックを披露するも、誰も見てくれずバカにされる始末。技術は凄いのに見せ方が悪い…というか自分に自信がないために客を惹きつけられない。そんな主人公が一年後には満員の観客を喜ばせる売れっ子に成長!それは腹話術を採り入れたからだった。

気弱な自分を偽るための人形。腹話術人形を通してなら饒舌に強気に賢く話すことができる。自身が生み出しそのペルソナ的な代弁者であった人形が次第に主人公を打ち負かし、人形と人形師、偽物と本物の主従が交代するかのように進行していくのが怖い。

アンソニーホプキンスがカメラに向かって実際に腹話術をしていることもあって、本当に意思を持ち命が吹き込まれたかのように見えてくる。途中から人形が勝手に動くことに何の違和感も覚えなくなってきて、後ろでホプキンスが動かしてました〜ってネタ明かしされてやっとそうだったってなる…みたいな。

この生み出された人格(人形)とホプキンスの関係性を解読する作業が本作なんでしょうね。弱い自分を偽るための仮面によって成功へと進んでいく主人公が、その仮面が心の中で支配的となるに連れて失っていく「本物の自分」を故郷に求め、自分を「偽り」に引き込もうとする仮面との綱引きを延々と繰り返すのが痛々しい。

職業的にも偽りで雁字搦めに固められた主人公が故郷にやって来ても家は既に無く、あるのは「自分」の亡き骸のみ。そんな中で「本物の感情・自分」の最後の砦である初恋の相手への愛情が対抗馬として設定され、偽りの自己の象徴である人形と湖を隔てて初恋の相手と楽しげにする姿に悲しくなってくる。マジックという偽りの手段を介さない愛情という本物の感情を確認する必死さとかも辛い…😭

そんで同じくほぼ同時期のサイコホラー『白い家の少女』でサイコ少女を演じたジョディフォスターと本作のサイコおじさんアンソニーホプキンスが『羊たちの沈黙』で共演するのは何か面白いですね😂
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