ペコリンゴ

ロープのペコリンゴのレビュー・感想・評価

ロープ(1948年製作の映画)
4.5
記録。
絞殺死体を囲む立食パーティー。来るはずの人物は既にそこに居る。

ヒッチコックの傑作サスペンス。犯人の2人は実在した人物がモデルで、映画史上初の全編ワンカット撮影とされる記念碑的な作品。

これ実際は背中の大写しで切ってるから厳密にはワンカットじゃないんだよね。
だけどそれを感じさず自然に見せる創意工夫が賞賛に値するのは間違いないし、最近でいうサム・メンデスの「1917」のような作品も本作が無ければ生まれてなかったかもしれない。

で、長回しもそりゃ凄いんだけど、それ以上に凄いのは予想を遥かに超えてくるスリリングさ。これほどハラハラ・ドキドキに満ち溢れた会話と演出は未だかつて見た事が無い。

核心に迫る発言を次から次に発するジェームズ・スチュワート演じるルパート。犯人の片割れフィリップは冷静さを欠き、乱れるピアノの運指は不快な音を奏でる。
フィリップの動揺を体現するように高速なリズムを刻むメトロノーム。完璧だ。

チェストの中に死体がある事は、ルパート含め、パーティーの出席者(被害者の父親までいらっしゃる!)は誰も知らない。知ってるのは犯人ブランドンとフィリップ、そして観客である我々だけだ。

バレそうになる恐怖を犯人と共有する、要するに共犯のような気持ちで鑑賞する80分。まさにサスペンスの巨匠ここにあり、と言わんばかりの偉大な作品だ。