もものけ

ワイルドバンチのもものけのネタバレレビュー・内容・結末

ワイルドバンチ(1969年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

鉄道事務所に銀が保管される情報をつかみ、強盗団ワイルドバンチは計画を立てて騎兵隊に変装して町へ到着する。
しかし、その町には彼らを追う賞金稼ぎ達が、偽の情報を流し待ち構えていたのだった…。


感想。
ヴァイオレンス映画の巨匠サム・ペキンパー監督が、西部劇に引導を渡したと言われる"最後の西部劇"、実在の強盗団ワイルドバンチが時代に取り残されて散ってゆく生き様をアクション映画としては目まぐるしく変わるカットの多さと、スローモーションを多用して迫力を印象的にした撮影方法でも有名な、荒くれ者達が反体制として戦う構図がアメリカン・ニューシネマとも言える作品で、サム・ペキンパー監督の最高傑作との呼び名も高い。

強盗団としての追われる者と、囚人としての追う者が正義も何も無く、ひたすらぶつかり合う暴力の有様を無抵抗な市民を巻き添えに、人間の残虐性という本質をえぐり出す内容になっているのも面白い。

西部劇ではお馴染みのピースメーカーやウインチェスターM1872というシングルアクションやレバーアクション銃と、新しい時代の銃でありボルトアクションやポンプアクションなどのスプリングフィールドM1903、ウインチェスターM1892、シングルアクションながら自動拳銃となるコルト・ガバメントが混在したり、馬に跨り強盗団として生きる古い荒くれ者と、ガソリンで走る自動車が登場するなど時代の移り変わりを表現し、時代に取り残されてゆく荒くれ者達としての生き方の古さが、カッコよさというよりは哀愁に近い演出です。
様々な名銃が登場してくるアクションは、銃マニアにも納得されるであろうカッコよさが目白押しで、銃への憧れが募る童心を思い起こさせる娯楽アクション映画とも言えます。

ちょこちょことエロスやコミカルな演出があって、個人的にはマカロニ・ウエスタンの雰囲気はあまり好みではないので多少飽きてしまう面もあります。
しかし、アクション・シーンはハリウッド作品としての迫力の見せ方がうまく、列車強奪や爆破される橋から落ちる騎兵隊など、西部劇としては斬新な迫力が面白いです。

11日間ぶっ通しで6台のマルチカメラで撮影されたラストの復讐大銃撃戦は、噂通りの迫力で仲間と代わりながらブローニングM1917機関銃で次々となぎ倒してゆくスローモーション映像は、映画史に残るであろう後の監督達へ影響を与えております。
悪漢でありながらその死に様のカッコよさが不思議な魅力になるのも、アメリカン・ニューシネマの良さなのでしょうか。
スローモーションという逆転発想で間延びしてしまうはずの映像が、よりアクションの迫力を引き出すことに気づいたサム・ペキンパー監督の才能の集大成です。

サム・ペキンパー監督といえば「戦争のはらわた」が最高傑作だと思う私には、マカロニ・ウエスタンが苦手な面もあり、アクションとしては素晴らしい作品でありながら、飽きてしまう面もあるので、3点を付けさせていただきました。

ハゲタカと共に群がる賞金稼ぎとの死闘がないまま終わるラストが、まさに象徴的であります。
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