マヒロ

やくざの墓場 くちなしの花のマヒロのレビュー・感想・評価

4.0
(2024.27)
大阪では地元のヤクザである西田組と山城組の抗争が続いていた。捜査にあたる黒岩(渡哲也)はその乱暴なやり方から仲間内からも危険視されていたが、周りを気にせず強引な捜査を続ける。そのうち西田組の若頭である岩田(梅宮辰夫)にも目をつけられる黒岩だったが、その向こうみずな性格を認められ、警察とヤクザにあるまじき兄弟分の関係になっていく……というお話。

白昼堂々銃撃戦を繰り広げるヤクザもヤバいが、警察も平気で尋問中に暴力を振るったり、悪質な闇金業者の事務所に乗り込んだら全員警察OBだったりと、どちらも大概めちゃくちゃな組織同士というのが恐ろしい。
主人公の黒岩はめちゃくちゃだが筋の通った男ではあり、保身や利権のために動く仁義もへったくれもない他の警官と違い、手段を選ばないだけで自身の正義は曲げない誠実さはある。その真っ直ぐさが行きすぎて、検挙の対象として敵対視していたはずのヤクザである岩田の自身と似た愚直な性格に惹かれ、最終的には盃まで交わしてしまうが、この世の常識が通用しない異分子という感じの行動の読めなさが見ていて楽しい。警察とヤクザの癒着というと同じ深作監督の『県警対組織暴力』を思い出すが、ある程度打算的なところもあるあちらより泥臭い友情みたいなものが感じられてまた違った良さがある。西田組の組員の妻である啓子(梶芽衣子)とも良い仲になっていくが、彼女との蜜月シーンの音楽の大袈裟さなど、正直ここだけは描写がちょっと湿っぽすぎるなと思ってしまった。色恋は無しにしてもう少し殺伐とした空気感を徹底して欲しかったかな。

岩田をはじめとした西田組の面々は在日コリアンやその血が流れる人が多く、それによる差別に悩まされている描写があるなど、単なるやくざものというだけでない社会派な側面もある。黒岩が彼らにシンパシーを抱くのも、警察組織の中で孤立していた自身と境遇を重ね合わせていたというのもあるのかも。
この映画自体が当時大阪で頻発していたヤクザ同士の抗争による銃撃事件をモチーフにしているらしく、映画内でそこまで深掘りされるわけではないがしっかり時代を見つめた上で作られた作品なのが誠実で良いなと思った。
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