しんしん

ブルジョワジーの秘かな愉しみのしんしんのレビュー・感想・評価

3.9
ルイスブニュエル監督作

上流階級の人々が集まり会食をする、しかし必ず何かに阻まれてしまう。そして何度も何度も同じメンツで場所、時間を変えて会食をやり直す。反復をしながら、決して完成しない。それはブルジョワジーの求める金や名誉には際限がなく、決して満たされないことを表している。彼らは最後に、車のガソリンが切れ一本道を歩く。彼らは死に向かっているのか、それとも生を取り戻そうとしているのか。

一見現実的なストーリーでありながら、「アンダルシアの犬」のようにシュールレアリスムがストーリーの底にかすかに、でも一貫して流れている。入ったお店の店主がなくなっていたり、会食をしていたら軍隊が入ってきたり、スパイに狙われていたり。また度々血塗れの死者が当然のように現れる。生の裏には死があることを気づかせる演習。

シュールレアリスムの演出として夢オチを効果的に使用していた。特に会食をしていたらそれが舞台の上で観客に席から見らていたというシーン。この作品はブルジョワの生活をあからさまには批判しないのだが、所々でその空虚さを指摘する。

散文的でコメディにも芸術的にも見える。