優しいアロエ

チャドルと生きるの優しいアロエのレビュー・感想・評価

チャドルと生きる(2000年製作の映画)
3.6
〈イランに生きる女たち〉

 イスラム社会の因習は、さまざまな形で女性を縛りつける。生まれた子が男の子ではなかったことを嘆く女性、身分を偽って帰郷する女性、チャドルを着ることを拒む女性。本作はこうした女性たちを次々と映し替えていき、休まることがない。

 似たような内容の作品として、タリバン政権下のアフガニスタンを舞台にしたアニメーション映画『ブレッドウィナー/生き延びるために』を思い出す。あちらは女性に対する暴力も露骨だったから引いてしまったが、本作のようにあくまで因習だけが蔓延っているだけというのも改革の手がかりがないぶん厄介なのかもしれない。実際、本作からは解決の糸口が明示されることはなく、ほとんど実状の紹介にとどまっていた。

 それでもチャドルを身にまとい生きる女性たち。チャドルの存在自体が否定されるべきというわけではないと思うが、少なくともあのチャドルがイスラムの男尊女卑的な風潮を視覚的に許容するものとなっていることは違いないのかもしれない。
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