かじられる

花様年華のかじられるのレビュー・感想・評価

花様年華(2000年製作の映画)
4.1
肌を重ね合わせなくても、付かず離れず、そばにいて、越えられない想いは、絨毯に消える足音のように、静かに求め合う。

よく似た境遇は、ただの言い訳、惹かれ合う視線も、最初から始まっていたこと。隣室にいても、異国にいても、情熱は衰えることなく、押し寄せる年月も、思い出のよすがを美しく、なつかしく濾過する。

わたしたちは何が欲しかったんだろう、確証めいた会話や仕草に、確証なんてなかったのに。

やがて甘く苦い記憶だけが残り、原寸大でない、あいまいな残響を、胸にひとり置き去りにする。小さな永遠を、宿すように、灯すように、何度も階段を登らせる、あの頃を。2019.1.16
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