たぶん、
目に映る景色や街並みはいつかの誰かの墓場。些事を重ねた日常が、顔もなく、声もなく、幾重の時を超えて降り積もっている。わたしが辿る物語も、死んでしまえば絵空事。誰の記憶にも残らず、いつか山を越えるサギのように点描に消えるだろう。
それでも生きることは止まなくて、喜びと悔しさを蓄えながら、食事を摂り、衣類を整えて、次に備えている。平穏無事である明日をなんとなく予感しながら、ごく自然に、今日という過去を受け入れている。幸か不幸か降り立ったこの場所、片隅、中心で、かそけき笑顔を交わし、しがみつくように信じて。
時代は、残酷な覚悟の上で語られていますか?孤独だけが彩ってきた色鮮やかな空。