ミルフィーユのように重ねた脆い理性より、一滴の血痕の方がはるかに説得力を持ってしまうのは皮肉だね。
誰だって苦しくてもバカらしくても、笑ったフリをしてやり過ごすのに、ただわたしがわたし足りうるその見>>続きを読む
たとえ口から出た言葉が喜びであれ、
慰めであれ、無音であれ、
人は叫びにならない叫びを
みな抱え込んでいて、
事情にならない事情を抱え込んでいて、
時空なんか交互に飛び出して、
それでも守りたかった思>>続きを読む
ただ精一杯自分のことを信じてるのに、待ち受けるのは、通る隙間もない狭い路地。仕事、仕事と言うけれど、働けない人にまで働けという社会に寛容さもなく、豊かさのカケラもない。同じく、背負いきれないほどの仕事>>続きを読む
自由って束縛だと思うんです。線引きされて、フィールドの形を認識しないと、与えられている空気さえ確保できない。
ナチスドイツが占領下のフランスで行った規制は、却って自由の素晴らしさ、美しさを知らしめて>>続きを読む
肌を重ね合わせなくても、付かず離れず、そばにいて、越えられない想いは、絨毯に消える足音のように、静かに求め合う。
よく似た境遇は、ただの言い訳、惹かれ合う視線も、最初から始まっていたこと。隣室にいて>>続きを読む
雲の色が、光の加減で変わるように、うつろうたのは、私の想い。胸の内はいつもためらいと驚きで揺れ、疑いで満ちる。
カメラを覗いた時の距離感、触れんばかりの顔料に染まった指、その逡巡する一瞬は誰に捧げた>>続きを読む
甘美な初恋の思い出は取って置こう。時が経ってしまえば美化され凝固していくのに、その顛末まで辿るのは残酷な現実しか待っていないのに、その裏切りを覚悟してでも、人はその糖衣にしがみつくのかな。あの日交わし>>続きを読む
今までどれほどの人と出会い、どれほどの別れを告げたのか。これからどれほどの人と出会い、どれほどの別れを迎えるのか。共通するのは向こうが消えるか、こちらが消えるかだけ。
ぼくらは普段当たり前のように誰>>続きを読む
夜が脱ぎ捨てたぬくもりの中で目を覚ますのを朝はまだ知らない。コンビニがいつもたくさんの食べ物で埋め尽くされているのにも驚く必要はない。行き先も会話も大して意味はないけれど、いつか忘れられていく言葉や景>>続きを読む
たぶん、
目に映る景色や街並みはいつかの誰かの墓場。些事を重ねた日常が、顔もなく、声もなく、幾重の時を超えて降り積もっている。わたしが辿る物語も、死んでしまえば絵空事。誰の記憶にも残らず、いつか山を越>>続きを読む
純然たる意思があるなら見せて下さい。
いつだってわたくしなるものは、一番近くにいる他人だし、何をしたって、無意識な誤変換は行われ、隠語を操る愉楽に似た、ポーズがデコレートされている。そこに規格外の権>>続きを読む
広がる地平線に逃げ場所はない。足さえ動かず過去やトラウマに捉われるなら、いつまでも子供。メイクで忘れたいことを隠せるなら、少し楽ですごく残酷。切り取られたきみの瞳に、未来を覗いてはいつも落ち込んでいた>>続きを読む
自分が一番近くにいる他人なら、家族は二番目に近い他人です。
わたくしなるものの中に家族は流れていて、家族なるものにわたしがいる。両者は時に依存し、時に距離を取ることで、微妙なバランスを保ち続け、なん>>続きを読む
寂しさの小箱なるスマホを絶えず握り、近くのコンビニで支払いを済ませ、リモコンひとつで部屋の快適さを保つわたしの生活には、生きてる実感より生かされてる感覚の方が強いかもね。ファインダー越しに覗く煌びやか>>続きを読む
伝えたいことを言葉にできたら、どんなに楽だろう。何か変わるわけじゃないけど、僕たちの季節が、壊れてしまいそうで、終わってしまいそうで、口に出せなかった。何秒数えたって、行く当てのない感情は、癒えない傷>>続きを読む
飲み込んだ声が、怒りや嫉妬に混じっても、気持ちは留まらない。素直になれない溜息は、タバコで吐き出して、見えないフリをしよう。きみといた時間より、きみがいない時間の方が美しい。部屋に落ちた夕闇が浮き上が>>続きを読む
個人的なお話。
生きているのが、今なのか過去なのか、分からない。目の前に広がる景色が、あの日の延長上にあるのなら、時は止まったまま。胸に刻み込まれた理想が、夢が、恋が、否応なく日陰を歩かせてしまった>>続きを読む
なで肩30度のフツーがそんなに偉いなんて思えへん。ブシェ夫もスカ子もマジョリティにしがみついてるだけなのに、なにがそんなに凄いん?あんたらのすがるものって、どんどん変わっていくもんや。だからせいぜいd>>続きを読む
ただ仕事に追われる毎日は食事と睡眠となけなしの甘美を挟みながら、日常さえ非日常に置き換えてしまう。娑婆が自宅なのか、会社が娑婆なのか、開き直りの社交モードがデフォなのか、ベッドぐったりがホームなのか、>>続きを読む
聴衆ならわたしにもいるはずだった。
フレディとは桁違いの市井の慎ましい生活にも勘違いや自意識、翻っての覚醒は何度となく訪れ、その度に去っていった。けど叫び足りないわだかまりは押し殺した歌声となって、>>続きを読む
出逢ったことに呼び名がなくても、話しかけずにいられない。
踊りましょう、どこにも行けやしないこの宇宙の中で。
グラスのように、ぼくらは脆い、けど割れてしまえば、それは誰かにとって凶器さ。
愛して>>続きを読む
胸につかえた想いはいつしか凝固し、変化を拒んでいた。春、生命が一斉に芽吹く季節に散ったあなたの命は、わたしをひとつの場所に留まらせた。届くはずのないあなたの手紙。それが最後で、それが全てだった。
周>>続きを読む
少しお喋りになったのは恋のせいにしてしまおう。理想を描いては裏切られ悲劇のヒーロー気取り、吐き出せない想いを甘い感傷でごまかす。歯の浮く言葉は宙に浮き、悲しみや痛みさえ詩的な言葉を綴らせる。運命の人と>>続きを読む
痛みはわたしを覚醒させた。歯痒くて苛立たしくて、壁さえ分からなかったあの頃、どこへ行っても何をしても、自由になれない気がした。やがて消えてしまうものこそ美しいなんて誰かの言い訳。退屈で、遠くに霞む景色>>続きを読む
結局、
着地点を見ないような市井の生活は、三文小説そのもので、日々に少しのアクセントを加え、しるしみたいな思い出を打ち上げては、感傷に浸り、解釈の美化に臨んでる。流れていく会話も、錨のように垂れ下が>>続きを読む
過ぎ去った季節を若さと呼んでしまうのは、いつまでもわがままです。踊らされ、笑うしかなかったあの頃をただの単語に押しこめてる。先が見えない不安さえ、美しいものに変換してる。でもそれはあとにしましょうね。>>続きを読む
わたしたちの背後には美しい景観が必要なんだろう。ちょうど高価な額縁が何でもない絵画を良く見せてしまうように。
パリは空さえ覆う。その境界線さえ魔法のように見えなくする。綴られた18の掌編は、どこかの>>続きを読む
大人のほうがいつまで経っても子供。
少し有名になったから、取り巻きが多くなったから、女優にもてはやされるから、
で
何?
あんたはあんた、夢想は夢想でしかない。現実は動きはしない。映画監督の名高>>続きを読む
伝えたいことは届かなくて、届かないから叫びたくて、聞こえるのは、悲鳴に似た祈り。
きみを理解したくて耳を澄ましたはずなのに、ふとした笑みも背中の温もりもこぼれてしまった。世界中がきみのものであって欲>>続きを読む
愛してる、
と言われても、あの日の笑顔はあの日の笑顔、あの日の涙はあの日の涙。誓いは色あせ、どこかへ消えてしまった。愛し合った、かつての喜び、胸を締めつけるけど、思い出してばかりじゃ、もう終わりね。何>>続きを読む
<私的邦画三部作 急>
左巻きも右巻きも渦であることには違いない。ただ右は開放を、左は内閉のイメージを想起させる。奇しくも二人ともサウスポーではなかったけれど。
遠目には同じに見える片側の渦は人知>>続きを読む
<私的邦画三部作 破>
空を切るはずの拳は確実に獲物をヒットしていた。それは宴の後と言うべき2021年の東京では奇跡と呼ぶに相応しかった。
国の施政によって個々のエロス(生の衝動)は混迷を極め、タ>>続きを読む
<私的邦画三部作 序>
「これ青春もの?」
「いや、違わなくない?」
上映後に若い女性がしゃべくっていた。
「あるいは呪いかも」と脳内でつぶやく。
93年当時には高校生の焼け付くような「平坦な戦>>続きを読む
※コメント欄に長文覚悟ネタバレ編あり
眠って忘れられるなら、
何も苦労はしなかった。
望んだはずの地位や豪奢の椅子は色褪せ、
虚しく呼気を染めた。
過去は今日にまで、
脂肪をつけてグロテスクに迫った>>続きを読む
別に聖人君子でなくとも、
およそ男子諸君とあるならば、
女子なる生き物は異星の幻で、
48時間の制限もなく、
魅惑と謎に翻弄されるは諸行無常。
言葉にできない何かは、
感情が追いつかないから叫ぶしか>>続きを読む
空から落ちてくるの、
雨だけじゃないの、
前から知っていた。
喜びも悲しみも降るその重み、
耐えられなくて、傘を差す。
幸せはタイミング、
その場じゃなきゃダメなもの選んだだけ。
見えない相手のこ>>続きを読む