かじられる

ラストレターのかじられるのレビュー・感想・評価

ラストレター(2020年製作の映画)
4.0
甘美な初恋の思い出は取って置こう。時が経ってしまえば美化され凝固していくのに、その顛末まで辿るのは残酷な現実しか待っていないのに、その裏切りを覚悟してでも、人はその糖衣にしがみつくのかな。あの日交わした会話、表情、空気を抱きしめたくて。いつだってずるい過去に一泡吹かせたくて。

だけど大切なことはいくら言葉を費やしても足りやしないんだ。あなたを想う情熱に終わりは無くて、連ねる文字はいつも静かに踊っていて、思わず見つめる視線さえ手紙になってしまう。そこにルールなんてなくてただあなたと向かい合いたいから、嘘なんか付いたりして、でもそんなことどうでもよくて、どうでもよくて、好きです、ただその一心で。

いつだってすれ違ってしまうから、最初の会話も最後の手紙も全部ラストレター。時間と場所が交差して、風景も変わるから、順番なんてありやしないよ。それでも終わったつもりでいる初恋に背中を向けた瞬間に、まだ嘘をついている気持ちになる。叶わなかったものは忘れられやしないんだ。

便箋ならまだある。
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