かじられる

生きてるだけで、愛。のかじられるのレビュー・感想・評価

生きてるだけで、愛。(2018年製作の映画)
3.8
ただ精一杯自分のことを信じてるのに、待ち受けるのは、通る隙間もない狭い路地。仕事、仕事と言うけれど、働けない人にまで働けという社会に寛容さもなく、豊かさのカケラもない。同じく、背負いきれないほどの仕事を持ち込んでは、自己責任を負わせる会社に未来もない。

だから何もかも脱ぎ捨てて走りたくなるんだ。なりふり構わず、周りの迷惑も顧みず、ただひたすら、世間とのズレを切り裂くように駆ける姿に魅了されて。

やたらに愛情を求めたっていいじゃん。少しぐらいはみ出すのが人ってものでしょ。いつだって満たされても満たされないから、せがむんだ。

文字通り、裸で駆け抜けるからこそ、津奈木はそこに届かぬ自分をなぞらえた。側を離れなかった。病気の有無なんてどうでもいい。ただいつだって等身大でぶつかってくれる寧子が嬉しかった。

すぐにブレーカーが落ちる室内にはいつも夜闇が迫ってる。そんな中、最後の最後、分かり合えないもの同士が、抱きしめ合い、ほんの少し訪れた安堵に身を任すことを、愛と呼ばせておくれ。お互い満たすんじゃなく、最大限に相手のことを思ってあげることを、どうか愛と叫ばせておくれ。
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