新潟の映画野郎らりほう

ヒミズの新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

ヒミズ(2011年製作の映画)
4.7
【深奥よりのエール交換】


自身が今 絶望の淵に居ると感じても、他者の目には それは必ずしも回復不能な苦境とは限らない。
見方を変えれば、客観視出来れば、何処かに屹度ある ― 希望が― 。

自己を他者事象勘案する事 - 叶わねば、他者に依る新たな視点(可能性)の付与。
少女(二階堂ふみ)のエールは、少年(染谷将太)が独力では決して気付けなかった絶望下唯一の希望〈可能性〉である。

それは冒頭『夢(可能性)を持て、お前達は世界で一つだけの花なんだ』と教壇上から文字通り〈上から目線〉で説く教師の〈他人事/綺麗事のエール〉とは異なり、同じ場所に降り立ち 視線を等しくしたもののみが発する事出来る〈真=心のエール〉である。
それは決して綺麗ではなく 粗野で拙劣で愚直だが、どんなエールより誠実だ。

彼等の身体深奥から搾り出す様な「エール交換」に、311後 絶望の時勢が透過する。
このエール(映画)も、粗野で拙劣で愚直だが屹度〃、届くと信じて―。




《劇場観賞》