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Tommy/トミーのKKMXのレビュー・感想・評価

Tommy/トミー(1975年製作の映画)
3.6
ここんところシェケナのしょうもねえロック映画ばかり観ていたので、正統派のロックムービーが観たくなり鑑賞。ロックミュージカル映画の古典ですが、カルト色が強いガーエー。なかなか面白かったのです。
しかし、正直ハマるまでは至らなかったです。理由は後述、まずは良かったとこから。


思いのほかストーリーがシビアで刺激的でした。
主人公・トミーは義父が父親を殺害した場面を目撃したことにより、心因性の視覚障害・言語障害となりました。これは自分を脅かす世界からの撤退を意味していると思います。
物語を通じて、母親はトミーを愛し続けます。しかしトミーにはその愛が届かない。トミー自身は「僕を見て、僕を感じて」と訴えていますが、トミーと母親はなかなか触れ合えません。
はっきりとは解りませんが、トミーの母はトミーを「なんとかしたい」と思っていてるように感じました。不憫なトミーを治してあげたい。母として当然の思いなのですが、トミーは治りたいのではなく、ほんとうの自分を見て感じて欲しいんですよね。トミーはある意味自ら感覚を遮断している訳ですから。
トミーと触れ合うには、「なんとかしたい」という思いを一端置いてから、トミーのことを見て、感じる想像力が不可欠だと思いました。トミーの母の愛情は本物っぽいが故に、愛するスキルの難しさを実感しました。

その後、思わぬ展開でトミーの感覚が戻ります。癒されたと感じたトミーら家族は何故か宗教家に!この超展開の背景には、当時のロッカーの間で流行っていたインドの導師ブームがあるように想像しました。
トラウマの話かと思いきや、もう一つテーマが出て来てビックリしました。

意外にも複雑な展開を見せる本作ですが、全体的には本質的な部分を受け止められず、振り回される悲しみや虚しさが通底しているガーエーだと感じています。
トラウマに関しても根源的な癒しは得られず、世界に通じることができたせっかくのピンボールも富を得る装置になってしまったことで不要な高揚感と誇大感を生み、人生が狂っていく。一見、テンションの高い終わり方をしますが、個人的には非常に苦い後味でした。俺は本作を悲劇と捉えています。


ストーリーもさることながら、やはり本作は音楽がメインです。フーの楽曲はいい感じなんですが、キーボードが多すぎる印象を受けました。個人的にはこの頃のキーボードの音が苦手なので、思ったほどノレず。
しかし、演奏シーンは最高で、ドラムのキース・ムーンとベースのジョン・エントウィッスルが超絶イケていました。キース・ムーンのドラミングなんてずっと見ていたい、最高!キース・ムーンは世界一チャーミングです。何故かちょっと高田純次感あるのもイカしてます。彼が演じる変態おじさんも超面白かった!
ロケットマンのピンボールの魔術師も最高すぎました!やはりエルトンは千両役者でした。
あと、ティナ・ターナー。あそこまで行くとセクシーを超越して、暴れる雌牛ですね。エロは1mmも感じませんでしたが、あのToo much感には正直シビれましたね〜!


で、本作にハマれなかった唯一の要因は、主演がダルトリーだったことです。客観的に見ても主演のタマではないと思いますが、とにかく生理的に無理!嫌悪感を覚えました。あのニヤケ面がムカついてしょうがないです。なにあの汚ねえ髪、勘弁してくれ、頭痛くなった。お陰様で自分がフーを愛聴しない理由がわかりましたよ。この男がフロントにいる以上無理だわ。
フーのフロントマンだからと言ってトミーという難しい役を与えてしまって良いのだろうか?ファンにはいいかもしれないが、リアルな俳優(もちろん、ちゃんとロックスピリットを持った俳優ね)に演じて欲しかった。

本作はカルト臭の強いガーエーではありましたが、主演が違っていれば、ロックファンの範疇を超えて、もっとポピュラーな古典になっていたかもしれません。
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