できるだけちいさくなって、息をひそめて眺めていること。
目を閉じると、微笑みながらあなたが立っていて、それを見たわたしは天国にきてしまったみたいに笑っている。横にならんで立つと、あなたにちかい肩だけじんと熱を帯びていった。それに気づかれないように、わたしは話しかけた。あなたにだけ聞こえる声で。
あなたに触れることはできるけど、それはわたしがしたいことではなかった。手を伸ばしたって、それは違う温度の何かでしかなかった。あなたの心が、わたしの心と重なりあうことは叶わないのだと知っているから、わたしの目はあなたしか映さないときめた。
蛇口からぽとりぽとりと水がおちていく。脈動の音とも似ていたそれは、ふたりの生活をかくしてくれていた。また、ふたりがふたりでいられる時間の、へっていく砂時計の砂のようにも思えた。
さいご、その目をほんとうに閉じるまでは。