櫻

風たちの午後の櫻のレビュー・感想・評価

風たちの午後(1980年製作の映画)
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できるだけちいさくなって、息をひそめて眺めていること。


目を閉じると、微笑みながらあなたが立っていて、それを見たわたしは天国にきてしまったみたいに笑っている。横にならんで立つと、あなたにちかい肩だけじんと熱を帯びていった。それに気づかれないように、わたしは話しかけた。あなたにだけ聞こえる声で。

あなたに触れることはできるけど、それはわたしがしたいことではなかった。手を伸ばしたって、それは違う温度の何かでしかなかった。あなたの心が、わたしの心と重なりあうことは叶わないのだと知っているから、わたしの目はあなたしか映さないときめた。

蛇口からぽとりぽとりと水がおちていく。脈動の音とも似ていたそれは、ふたりの生活をかくしてくれていた。また、ふたりがふたりでいられる時間の、へっていく砂時計の砂のようにも思えた。


さいご、その目をほんとうに閉じるまでは。
櫻