Kaoru

青春群像のKaoruのレビュー・感想・評価

青春群像(1953年製作の映画)
4.5
最愛の監督フェリーニの中でもかなり好きなほうに入るこの作品。

女好きのダメ男ファウストとその嫁の兄モラルド。そのほか空想家、バリトン歌手、劇作家志望というどれもこれも夢だけ一丁前なダメダメ5人組の話。どいつもこいつも口だけ達者な失業者で、みんなで集まればまぁハチャメチャな感じなのだけれども、(アタシの推測ですが)本当のところ彼ら全員がこのままではいけないと感じている。本当は働きたいし、都会へ出たい、だけれども人の批判や真面目な人たちの非難はする。何故かって、不安や恐れを持っていてもやはり隣を見れば自分とおんなじよぅな仲間がいて、一緒にいることで癒されもしている。その焦燥感となぁなぁの微妙な表現を、あの浜辺のシーンだけに込めるこの監督のやり方がとてもとても好き。実のところ癒されているのではなくごまかしているだけなのだけれども、唯一仲間を置いて都会へ出たモラルドだけが逃げずに前進した。物語はそこで終わるけれども、あの後もしかしたらモラルドに啓発された人は同じようにまっとうに生きようと決意したかもしれない。または結局モラルドを非難して変わらないでいたかもしれない。
いずれにしても作品だけでストーリーを完結させるのではなく、観客に想像と結論を委ねてしまぅ素晴らしい監督です。

若者の青春劇、現代のハリウッドならば、ドラッグやらセックスやらになるのかもしれないけれど、この作品でいう若者群像は自己責任からの逃げというアタシたちにとってもっと身近で今の時代の日本にも十分当てはまることだからすごい。

余談だけれども、リッカルド役はフェリーニの実弟(本名もリッカルド)。これがまぁフェリーニ監督に激似で!笑。アルベルト役は戦後のイタリアでとても活躍したコメディアンのアルベルト・ソルディで彼のデビュー作でもあります。またフェリーニと言えば音楽はニーノ・ロータですがそのコンビ結成の第1作目といぅこともありイタリアの映画史にとってすごく大切な作品でもあります。
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