このレビューはネタバレを含みます
老犬を売れと迫られるけど売りたくない爺さんのお話。犬がデカくてモサモサ。チベタン・マスティフ?犬がバイクに轢かれないかドキドキ。
犬を売りたくない老いた父と、盗まれる前に売れという息子。犬は牧畜民としてのチベット民そのもの、父は消えゆくチベット人の伝統、息子は現代の新しいチベット人をそれぞれ体現しているよう。
終始徹底して引いた目線で、犬の犬らしい愛くるしさも全く映されない。家族の情愛らしきものも直接的にはほぼ映されず。変わりゆくものと残るものの対比を冷徹に映し出しているようでした。
画面の構成は今一つで、いくら何でも一貫して暗すぎに感じ、色調も鈍い。演出の方もイマイチだったり、カット割りが変なところもあったり。
たまにハッとするような美しい構図。最たるものはラストシーンで、鎖を引く後ろ姿、犬の喘ぎ声も痛々しく、父の心の叫びのよう。それじゃこんなデカい犬持ち上がらないだろ、と思わなくもなかったですが、構図が素晴らしい。
犬というモチーフの描き方といいテーマといい構成といい素晴らしいかったのですが、ところどころで技術的な問題が見え隠れするのが惜しい作品でした。