Jaya

浮き雲のJayaのネタバレレビュー・内容・結末

浮き雲(1996年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

不況の煽りを受け夫ラウリが失業し自らも失職した給仕長イロナが再就職も上手くいかずすってんてんになるも元オーナーの助けでレストランを開くお話。レストランやアパートの壁の色が印象的。

乾杯で一人オレンジジュースなのが芸が細かいラユネン。そして確かに全く人がいないトラム。当時のフィンランドは本当にこんな様子だったのだろうか。

そして弱きを挫くだけの存在と描かれる権力ですが、これも思想的反映というよりも当時の不況を表すものなのかも。失業補償の受給を拒絶するのはプライドの表象なのかお国柄なのか…。

イロナの周辺のみが救われるという展開は、イロナの不遇だけでは担保されるとは感じられず、息子の夭折らしき設定も必要性を感じませんでしたが、それもリアリティの反映のようにも感じたり。

当時の国情の理解が必要であるようにも思いましたが、映像と劇伴の朴訥さとともに常に諧謔のある語り口が楽しく、控えめかつ密やかに語られている愛が美しかった作品でした。
Jaya

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