このレビューはネタバレを含みます
ル・アーブルの港へ漂着した密航者の少年イドリッサを靴磨きのマルセルをはじめ色んな人が助けるお話。マルセルとアルレッティって「天井桟敷の人々」?
独特の色合いがとても美しい画面で織り成される優しい物語。淡々としたなかに生まれる説得力は何だろう。冒頭のシーンは鞘当てなのか違う事実があるのか。
人を助けるのに理由がいるのか?と強く問うように、逡巡なくイドリッサを助けていく人々。モネ警視が一貫してカッコいい。単純ながら安くないヒロイズム。
アルレッティの回復も最低限の演出で描かれ、恩寵などといったありがちな因果の色は一切ない。起こるべきことが淡々と起こるだけという、肝の据わった描写に感動を覚えました。
人の有り様を強く肯定し、リアリズムとペシミズムを履き違えるような視点を一蹴するかのようで、映画とはこうあるべきとも思わせられた名作でした。