Jaya

愛しのタチアナのJayaのネタバレレビュー・内容・結末

愛しのタチアナ(1994年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

コーヒー大好き仕立屋ヴァルトが修理工レイノと共に車の試運転に出てエストニア人タチアナとロシア人クラウディアの旅行者を拾って港まで旅するお話。「オリマッティラのジョニー」とは一体。

殆どセリフがないなかでのタチアナの愛らしさやレイノのコミカルなダンディズムの演出が凄まじい。とても淡白にも見えるカット割りが優しさに溢れます。

やたらと奥手らしい男2人と、お上りさん的な純朴さのタチアナ、その保護者のようなクラウディア。細かい個性の表出が素晴らしく、フィンランド語の可否の取り合わせも面白い。タチアナが肩に寄りかかる唐突さにも不自然はなく。

一貫して漂う仄かな非現実感が一気に集約された、カフェへの車での突撃。日常への復帰は、これまでの物語が夢想だったことを示すのだろうか。母親の登場もその帰結か、非現実感の連続か。

日常に倦んだ男の視点を通して、美しいまでに淡々とした男女の物語が、ある意味ではとても衝撃的なラストシーンに纏め上げられていて、何重かの愛への目線に感動させられた傑作でした。
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